【2024年度】千葉県公立高校入試・国語大問4解答解説|「I」と「me」の相互作用と論点の推移を読む

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

目次

はじめに

評論文を読み解く際、筆者の主張を浮き彫りにする「対照関係」や「論点の推移」の構造を把握することは、極めて有効な知的枠組みとなる。本問で取り上げられている好井裕明の『「今、ここ」から考える社会学』においては、ジョージ・ハーバート・ミードの理論をベースに、他者の態度を取り込む「me」と、新しい反応を生み出す「I」という対照的な二側面が提示され、それらが相互に作用することで「社会的自己」が形成される過程が描かれている。

しかし、こうしたテーマや背景知識を知っているだけでは、入試本番の制限時間内で確実に得点することはできない。正答を導くには、本文の記述から構造を客観的に仕分けし、選択肢や記述を処理する『思考手順』の言語化が不可欠である。本記事では、その具体的な解法の型を示す。

解答一覧

正答
(1)
(2)
(3)I=ア、II=ア、III=エ
(4)イ・オ
(5)(a)
(5)(b)政治や社会に主体的に参加する自己をつくりあげ、他者に対してその姿を示す
(6)

好井裕明『「今、ここ」から考える社会学』の要約と論理構造

本問を解くにあたり、まずは文章全体を貫くマクロな視点を提示する。

本文は、ミードの理論を出発点とし、人間の「自己」がどのように形成され、社会に関わっていくかを論じている。この文章の論理を追う上で前提となるのは、前半の理論説明から後半の筆者の主張への「論点の推移」である。

段階論点内容
前半社会的自己の形成他者の態度を取り込む「me」と、新しい反応を生み出す「I」の相互作用によって自己が形成される。
中盤他者との出会い多様な他者との量的・質的に異なる出会いを通して、人間は社会化し成長する。
後半「I」の創発性の重視既存の社会性を批判し、修正・変革して、新しい自己や社会のあり方を他者へ示す力(筆者の主張)を論じる。

前半の「me」と「I」の二面性から、後半にかけて「I」に結びつく創造性や、社会を「批判する力」の重要性へと論点がシフトしていく。この全体構造を念頭に置くことで、各設問の正答を客観的に判断しやすくなる。

【大問4】各設問の解答解説と思考手順

(1)「はっきり」と同じ品詞の語を選びなさい

  • 手順1(設問要求): 傍線部「はっきり」と文法上同じ働き(品詞)をするものを特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 「はっきり」という単語の活用の有無と、修飾している先に範囲を限定する。
  • 手順3(論理整理): 品詞の判別においては、二段階で確認する。①活用の有無を確認する。「はっきり」は活用しない(形が変わらない)。②文中の働きを確認する。「はっきり(と)理解しづらい」と動作や状態を詳しく説明しているため、副詞である。
  • 手順4(選択肢比較): 各選択肢に対し同じ手順を行う。イ「美しい」は形容詞、ウ「ような」は助動詞、エ「確実に」は形容動詞の連用形であり、すべて活用するため排除する。ア「やがて」は活用せず、「昇る」という動作が起こる時期を修飾する副詞である。
  • 結論: 正答はに決定。

(2)シカゴが「人種の坩堝」と呼ばれるのはなぜか

  • 手順1(設問要求): 「人種の坩堝」という比喩表現が示す、当時のシカゴの状態を特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 「人種の坩堝」という言葉が提示された直後の、シカゴに関する説明部分に限定する。
  • 手順3(論理整理): 「坩堝」とは多様な物質を入れて溶かす器である。これを本文の状況に置き換えると、シカゴは「多様な人種・民族・言語・文化を持つ人々が一つの都市に集まり、違いを抱えながら暮らしている状態」であると整理できる。
  • 手順4(選択肢比較): ア(社会問題の乗り越え)やイ(個別の問題の調査不可)は本文に記述のない内容である。エ(言葉や生活習慣の壁がなくなった)は事実の逆転である。ウは、多様な人々が違いを抱えながら一つの街として成り立っている状態を過不足なく説明している。
  • 結論: 正答はに決定。

(3)人間が「社会的な存在」となる過程を説明しなさい

  • 手順1(設問要求): 人間が社会的な存在となる過程を説明した文の空欄I〜IIIに入る語を特定する。
  • 手順2(根拠範囲): ミードの「社会的自己」論における自己形成プロセスの記述に限定する。
  • 手順3(論理整理): 文の構造から役割を確認する。「誰との出会いか」「誰の言動を受け入れるのか」「何の役割に気づくのか」という関係を整理する。人間は「他者」と出会い、その「他者」の態度を内面化し、「社会の構成員としての自己」の役割に気づくという論理フローを構築する。
  • 手順4(選択肢比較): 本文の論理フローに基づき、Iには「他者」、IIには「他者」、IIIには「社会の構成員としての自己」が該当する。
  • 結論: 正答はI=ア、II=ア、III=エに決定。

(4)本文における「出会い」の捉え方を二つ選びなさい

  • 手順1(設問要求): 本文の「出会い」がどのような範囲の他者との関係を含んでいるかを示す選択肢を二つ特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 具体的な出会いの例が列挙されている段落と、「圧倒的な量と質がある」とまとめられた一文に限定する。
  • 手順3(論理整理): 本文の「量と質」という抽象語を、選択肢を処理するために具体化する。「量」=関わる時間の長さや接触の程度(長期から一度きりまで)。「質」=生き方への影響や精神的な結びつきの強さ(影響が大きいものから希薄なものまで)。
  • 手順4(選択肢比較): ア(役割の演じ分け)、ウ(良好な信頼関係のみ)、エ(感情の肯定・否定)は、本文で提示された分類基準ではないため排除する。イは「量(時間の長さや接触の程度)」の幅を、オは「質(影響や結びつきの強さ)」の幅を正確に説明している。
  • 結論: 正答はイ・オに決定。

(5)(a)「批判する力」を持たない「私」はどのような存在になるか

  • 手順1(設問要求): 「批判する力」を持たない場合、「私」がどのような状態にとどまるのかを特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 「自己」が社会性を盛るためだけの器ではない、と論じられている段落に限定する。
  • 手順3(論理整理): 「I」の創発性・創造性に結びつく「批判する力」を持たなければ、「me」に代表される、他者から取り入れた社会的な側面(規範や価値観)をそのまま維持するだけの存在になるという因果関係を整理する。
  • 手順4(選択肢比較): ア(他者に期待される)やウ(るつぼの中にいる)は文脈として不適切である。イ(ちがいをもつ)は批判する力の有無とは関係なく存在する前提である。エ「社会性を守る」は、既存の価値観を変革せず維持するだけの状態を正確に表している。
  • 結論: 正答はに決定。

(5)(b)「批判する力」を持つことで何ができるか

  • 手順1(設問要求): 指定語(自己・社会・他者)をすべて使い、「批判する力」を持つことで何ができるのかを三十字以上三十五字以内で記述する。
  • 手順2(根拠範囲): 「批判する力」がプラスに転化するプロセスが書かれた最終段落に限定する。
  • 手順3(論理整理): 単に言葉を並べるのではなく、修飾関係と述語のつながりを設計する。「政治や社会に主体的に参加する」が「自己」を修飾し、その自己を「つくりあげる」、さらにその姿を「他者に示す」という文の骨格を作る。
  • 手順4(選択肢比較): 条件(指定語の使用、字数制限、文末「〜ことができる」への自然な接続)を満たしているかを厳密に照合し、構文を確定する。
  • 結論: 正答は政治や社会に主体的に参加する自己をつくりあげ、他者に対してその姿を示すに決定。

(6)文章の構成として最も適当なものを選びなさい

  • 手順1(設問要求): 文章の前半と後半における論点の推移を正しく説明した選択肢を特定する。
  • 手順2(根拠範囲): 文章全体の構造、特に前半(ミードの理論紹介)と後半(筆者の主張の展開)に限定する。
  • 手順3(論理整理): 前半は人間が「I」と「me」の両方の側面を持つ社会的自己の形成についての説明。後半は、その中でも「I」の側面に結びつく創造的・批判的な力が不可欠であるという重点の推移を整理する。
  • 手順4(選択肢比較): アは「Iとmeの比較」のみで後半の重点が欠落している。ウは重視する対象が「me」と逆転している。エは本文にない「日本人の問題視」という記述が含まれている。イは前半と後半の重点の推移を客観的に正確に説明している。
  • 結論: 正答はに決定。

授業ではここまで扱う:記述の「型」と文構造の設計

ここまでの解説から、文法問題における活用の有無と修飾先の確認や、抽象的な言葉(量と質)の具体化といった、客観的な処理プロセスを確認できる。しかし、当研究所の実際の授業では、得点差が開きやすい記述問題において、初見でも迷わず答案を組み立てられるよう、さらに汎用的な手順(型)を身につけさせる。

今回の(5)(b)のような、複数の指定語(自己・社会・他者)を用いて論述する問題では、単語を時間順に並べようとすると日本語の構造が破綻しやすい。授業では、以下のように「修飾語・中心となる名詞・述語」という文構造(シンタックス)を設計する手順を徹底的に訓練する。

段階処理内容本文への適用例
第1段階中心となる名詞を確定する自己
第2段階名詞の性質を示す修飾語を置く「政治や社会に主体的に参加する」自己
第3段階述語を配置する自己を「つくりあげ」、その姿を「他者」に「示す」

重要なのは、「批判する力を持つと素晴らしい存在になれる」という曖昧な印象で文章を書かないことである。指定語を単に順番に並べるのではなく、どの言葉がどの言葉を説明し(修飾関係)、最終的にどのような動作に着地するのか(述語)を設計することだ。この手順を別の評論文の記述問題にも転用できるよう整理することが、安定した得点力へと直結する。

【千葉県公立高校】国語・論説文の対策と復習手順

本文のテーマや筆者の主張を読んで理解することと、初見の設問に対して正答までの手順を自力で再現することは、まったく別の次元の作業である。解説を読んで内容を理解するだけでは、初見問題で同じ手順を再現できるとは限らない。

千葉県公立高校の国語において上位校を目指すのであれば、評論文を雰囲気で読み流す習慣を避け、対照関係や論点の推移を客観的な事実に基づいて説明できる読み方へ切り替える必要がある。復習では、本記事で示した手順(活用の有無の確認、抽象語の具体化、記述答案の文構造設計など)を別の問題でも反復し、なぜその選択肢が正解になるのか、なぜ他の選択肢が排除されるのかを、自らの言葉で明確に説明する練習を重ねてほしい。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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