※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【2024〜2026年共通テスト英語】第6・7・8問(複数テキスト読解)|主張・条件・根拠を照合する論理マーカー分析
共通テスト英語の後半(第6問・第7問・第8問)で出題される、複数の文章や図表を比較・照合する「複数テキスト統合読解」では、それぞれの主張・条件・根拠を同じ基準で整理することが求められる。
標準的な語彙や文法知識が不可欠であることは言うまでもない。しかし、各英文を日本語へ置き換え、内容を大まかに記憶するだけの「フィーリング読み(和訳依存)」では、二つ以上のテキストに共通する点や、条件の違いを正確に照合しにくい。
例えば、後述する rather than(〜ではなく)などの打消しの構造を読み落とし、一方のテキストで明確に退けられている情報を、「本文のどこかに書いてあったから」という理由だけで筆者の主張や正答として採用してしまう失点パターンが頻発する。
そこで重要になるのが、情報関係を示す論理マーカーである。当研究所では、過去3年間(2024〜2026年)の共通テスト英語リーディングから、情報関係を判断する重要な手掛かりとなる「論理マーカー」と重要語彙を抽出し、機能別に分類・整理した。
過去3年間の共通テスト英語:論理マーカーおよび重要語彙の機能別分類データ
以下の表は、単なる和訳のリストではない。各単語が文脈の中でどのような働きをしているかを示す実務的なデータである。
| 語彙/構文 | 品詞 | 日本語の意味 | 分類 | 備考(本文中での働きなど) |
| rather than | 群前置詞 | 〜ではなく | 対比・打消し | 既存の期待や役割を打ち消し、対極にある実態を示す |
| instead of | 群前置詞 | 〜の代わりに | 対比・打消し | 古い前提や従来の選択肢を打ち消し、新たなアプローチへの転換を示す |
| in contrast | 副詞句 | 対照的に | 対比・打消し | 前述の条件とは真逆の条件を提示し、結果の差異を際立たせる |
| opposite | 前置詞 | 〜の反対側に | 対比・打消し | 空間的な位置関係を明確に対比・限定し、行動や視線を決定づける |
| despite | 前置詞 | 〜にもかかわらず | 譲歩・条件非依存 | 不利な事情を認めつつ、それに反する事実を示す |
| regardless of | 群前置詞 | 〜に関係なく | 譲歩・条件非依存 | その条件に左右されず、主節の内容が成立することを示す |
| while | 接続詞 | 〜である一方 | 譲歩・条件非依存 | 一方の事実を認めつつ、相反する懸念などを並立させ評価を制限する |
| trigger | 動詞 | 引き起こす | 因果・結果 | 特定の事象が、連鎖的な反応や結果を直接的に引き起こす |
| promote | 動詞 | 促進する | 因果・結果 | 特定の要因が、プラスの状態を直接的に引き起こす |
| as a result | 副詞句 | その結果として | 因果・結果 | 先行する事象が原因となり、新たな状態へと移行する |
| in summary | 副詞句 | まとめると | 因果・結果 | 複数の理由や具体例を、最終的な一つの主張・帰結へと収束させる |
| according to | 群前置詞 | 〜によれば | 情報源・範囲 | 情報・主張の出所を示す |
| with regard to | 群前置詞 | 〜に関しては | 情報源・範囲 | 雑多な情報の中から特定の話題に焦点を絞り、適用範囲を限定する |
| in quick succession | 副詞句 | 立て続けに | 時系列 | 事象が連続して発生し、状況が急展開する様子を示す |
| in advance | 副詞句 | 事前に | 時系列 | 基準時点より前に行われたことを示す |
| eventually | 副詞 | 最終的に | 時系列 | 過程を経た末の出来事を示す |
| smoothly | 副詞 | スムーズに | 状態変化(重要語彙) | 障害なく進行する様子を表す |
| drastic | 形容詞 | 劇的な | 状態変化(重要語彙) | 日常の平穏な状態から急激な変化への移行要因 |
| run out | 句動詞 | 尽きる | 状態変化(重要語彙) | リソース枯渇による行動の強制的な制約・終了 |
| ruin / totally ruined | 動詞/形容詞 | 台無しにする | 状態変化(重要語彙) | 取り返しのつかない致命的な状態への移行 |
| accelerate | 動詞 | 加速させる | 状態変化(重要語彙) | 事象の進行感覚の早まり |
| perceive | 動詞 | 認識する | 一般重要語彙 | 物理的な事実と心理的な感覚の違いを説明する文脈などで使用 |
| estimate | 動詞 | 推定する | 一般重要語彙 | 記憶や感覚に基づく推測プロセス |
| tolerate | 動詞 | 耐える | 一般重要語彙 | 外部刺激に対する身体的・心理的な耐性 |
| distraction | 名詞 | 気を散らすもの | 一般重要語彙 | 深い思考や集中を阻害する要因として対比される |
| budget | 名詞 | 予算 | 一般重要語彙 | 個人の選択やプランを現実的に制限する要因 |
| artificial | 形容詞 | 人工の | 一般重要語彙 | 自然(natural)との明確な対比を示す |
| prediction | 名詞 | 予測 | 一般重要語彙 | 実用化などに関する専門家の見解 |
| capable | 形容詞 | 有能な | 一般重要語彙 | 対象の技術的な水準を示す事実 |
| essential | 形容詞 | 不可欠な | 一般重要語彙 | 特定の要素が果たす役割 |
【共通テスト英語・複数テキスト統合読解】論理マーカーを指標とする照合の手順
長文読解において、論理接続表現は前後の情報関係を判断する重要な手掛かりとなる。複数資料問題では、一文内の論理関係を処理した上で、テキスト間の関係性を紐解く必要がある。
【テキスト間の照合作業】「主張・条件・根拠」の分離と統合
複数の文章を読む際、内容を一つの記憶へ混ぜてはならない。まず、テキストごとに情報を分離する。
決定ルール(手順):
テキストAとテキストBそれぞれについて、以下の項目を整理する。
・中心的な主張(何を肯定・提案するか)
・成立条件(どの条件下で成立するか)
・根拠(事例・数値・専門家の見解など)
・留保や例外
次に、両者を同じ観点で比較する。
・主張が一致している
・結論は同じだが根拠が異なる
・一方が全面的に肯定し、他方が条件を付けている
・利点と欠点を別々に扱っている
・一方の具体例を、他方の一般論が説明している
この対応関係を確定してから、選択肢へ進むことが重要である。
【選択と打消し】「rather than」と「instead of」による情報選別の型
rather than や instead of では、一方の情報が退けられ、もう一方が実際の選択や行動として示される。
決定ルール(手順):
基本的な関係は次の通りである。語順を確認し、どちらが退けられ、どちらが実際に成立しているのかを明確にすること。
・A rather than B = BではなくA
・Rather than A, B = AではなくB
・Instead of A, B = Aの代わりにB
例えば、2025年度の英文には次の構造がある。
Rather thanserving humanity, we starred in silly television shows.
ここでの退けられる内容は「serving humanity(人類に奉仕すること)」であり、実際に行ったことは「starred in silly television shows(ばかげたテレビ番組に出演したこと)」である。
複数テキストを照合する際も、退けられた情報を、その文章に登場したという理由だけで筆者の主張として採用してはならない。
【因果関係の統合】「原因・結果・影響」の3段階処理の型
trigger、promote、as a result などは、原因と結果の対応を読む手掛かりとなる。因果関係を扱う設問では、原因だけでなく、結果として何が変化したかまで確認する。
決定ルール(手順):
因果関係を見つけた場合は、次の三段階に分ける。
- 原因・きっかけ
- 直接生じた結果
- その後の影響
※以下は処理手順を示すために当研究所が作成した例文である。
The introduction of the automated system
promoteda reduction in errors.(原因:自動化システムの導入 / 結果:エラーの減少)
複数テキストでは、同じ原因について異なる結果が示される場合や、同じ結果について異なる原因が示される場合がある。論理マーカーだけで正答が決まるわけではなく、他のテキストが同じ変化を支持しているか、別の条件や欠点を示していないかまで比較することが必要である。
合否を分けるのは「正しい型(手順)」の徹底である
共通テスト英語の複数テキスト統合読解では、各英文を個別に理解するだけでなく、それぞれの主張・条件・根拠を共通の観点で比較する必要がある。
語彙力や英文を読む経験、処理速度が不可欠であることは言うまでもない。しかし、誤答原因を検証せずにひたすら英文を読みまくるだけの自己流の学習では、出題の真の構造や自身に不足している処理手順へは気づきにくい。
実戦では、次の順で処理したい。
- 比較軸の確認と情報の分離: 設問が要求する比較軸を確認し、テキストごとに主張・条件・根拠を分ける。
- 論理マーカーの視覚化と情報選別: 対比・因果・譲歩・範囲を示す表現に印をつけ、採用された情報と退けられた情報を区別する。
- 関係性の判定と選択肢の照合: 二つのテキストの一致・対立・補足関係を判定し、選択肢が主体・条件・時点・範囲を保っているか確認する。
過去問で間違えた場合は、「英文が読めなかった」で終わらせず、どのテキストの情報か、どの条件下で成立するか、別の文章とどのような関係にあるかを、データに基づき淡々と確認すること。論理マーカーを手掛かりとして各テキストの情報を分離し、最後に再統合する。この手順を繰り返すことで、複数資料を扱う設問でも判断箇所を限定しやすくなる。

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