【古文分析】なぜ、千葉県公立入試は「ダジャレ」で受験生を篩(ふる)い落とすのか?(2016/2023年事例分析)

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

目次

1. 序論:「滑稽(こっけい)」という名の地雷原

「古文は堅苦しくて苦手だ」。そう嘆く受験生は多い。 しかし、千葉県公立入試の過去問分析を進めると、ある奇妙な事実に突き当たる。

出題者が好んで「滑稽(ユーモア・失敗談)」を題材に選んでいることだ。 一見すると「面白い話」だが、油断してはならない。 実は、「笑い(オチ)」を理解させる問題こそ、最も残酷に学力差を暴き出すからだ。

本稿では、過去に出題された「珍事件」を2つ解剖し、その背後にある「笑いの論理構造」を解説する。

2. Case 1:僧侶の「偽装工作」事件(2016年後期)

まずは2016年の『雑談集』。これは「論理的な皮肉」の典型例である。

【事案の概要】 殺生禁断の身でありながら、隠れて「ゆで卵」を食べていた高僧。 言い訳として「これは茄子(なす)の漬物だ」と強弁した。 翌朝、ニワトリの鳴き声を聞いた小坊主が、真顔でこう告げる。 「あそこで『茄子漬の父』が鳴いております」

【分析】 この小坊主のセリフが「面白い」と理解できるか。それが設問の核心だ。

  1. 前提: 僧侶は「卵=茄子」と定義した(虚偽)。
  2. 論理: ならば「卵の親(鶏)=茄子の親」でなければならない。
  3. 帰結: 鶏を「茄子の父」と呼ぶことで、僧侶の嘘を矛盾によって暴いた。

千葉県の出題者は、この高度な「背理法的なツッコミ」を読み取れるかを試したのである。

Case 2:鼻孔からの「魚類射出」事件(2023年)

次は2023年の『宇治拾遺物語』。こちらは「同音異義語(掛詞)」の処理能力を問う事例だ。

【事案の概要】 氷魚(ひお)という小魚を貪り食った僧侶が、むせて鼻から魚を飛ばしてしまった。 周囲の嘲笑に対し、僧侶はこう切り返す。 「鼻から出たのは氷魚(ひお)だけに、氷(ひょう=雹)が降ってきたのでしょう」

【分析】 ここで問われているのは、「寒いオヤジギャグ」への耐性ではない。 「文脈の中で、瞬時に同音語(ひお=ひょう)をリンクさせる語彙力」である。 「鼻から魚が出る」という異常事態と、「雹が降る」という気象現象を、音韻の類似性だけで強引に接続する。この「知的曲芸」を構造として理解できた者だけが、正解の選択肢を選べる仕組みになっている。

結論:ユーモアとは「高度な知能戦」である

古文における「笑い」は、現代のバラエティ番組のような受動的なものではない。 読者が自ら文脈を補い、言葉の二重底に気づかなければ成立しない「能動的な知能戦」である。

千葉県入試が「ダジャレ回」を採用する理由は明白だ。「オチが分かる」=「文章の論理構造を完全に掌握している」ことの、最も端的な証明になるからだ。

もし君が古文で点を取りたいなら、単語帳を丸暗記する前に、まず文章に対して「ツッコミを入れる視点」を持て。 「どこがおかしいのか(矛盾・掛詞)」を探す姿勢こそが、難解な古文を攻略する最強の鍵となる。「どこがオチなのか」を探そうとする視点があれば、難解な古文は急に「解ける文章」へと変わる。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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