【市販の過去問にない】2026年東邦大東邦中(後期)算数・全問解説:難問を粉砕する「変換処理」の型

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

東邦大付属東邦中学校・後期入試の算数は、天性のひらめきや計算体力を競うものではない。与えられた複雑な条件から不要な情報を省き、自分が処理しやすい形へと「変換」する情報処理能力のテストである。

「じっくり図を描いて考えよう」「気合で最後まで計算しきろう」といった通説は、同校の入試においては後半の難問に使う時間を失う要因となり得る。客観的なデータに基づき構造を分析すれば、難問は小学6年生が本番で実行可能な「変換作業」に置き換えられる。

本記事では、市販の過去問集では詳しい解説が省略されている2026年度後期入試の全貌を分析し、無駄を省いた合理的な手順を公開する。

目次

1. 東邦大東邦中 算数(2026年後期)解法分析・データベース

当研究所が全設問の構造を分解し、間違えやすいポイントと、それに対する戦略的な「型」を整理したものである。

大問分野問題の仕掛け(構造)初手の手順(型)つまずく原因
1-(1)(2)計算帯分数・小数が混在する逆算カタマリのまま処理する逆算基礎。手数の多さによる計算ミス。
1-(3)計算5000付近の4桁×2桁の加減算基準値からの差分への変換差がつく。力技の筆算による時間のロス。
2-(1)割合水の蒸発と食塩の追加による濃度一致食塩の量の追跡標準。濃度ではなく「食塩の絶対量」に変換。
2-(2)割合単価の違うペンの購入(合計と個数差)パターン分けのつるかめ算差がつく。Aが多いかBが多いかの2パターン検証。
2-(3)図形直角三角形を頂点基準で30度回転面積の差を利用した等積変形差がつく。三平方の定理に逃げようとする迷走。
2-(4)集合はさみとのりの所持(一方が0人の領域)ベン図の領域確定と最大・最小難。重なり部分の最大・最小を図から論理的に絞る。
3速さ線分上を反射して往復する2点のすれ違い合計距離の法則への変換難。反射のたびに距離を計算しようとして混乱する。
4割合水の流入とポンプのくみ出し(ニュートン算)減少速度の方程式への変換差がつく。図に描こうとする執着を捨て、式へ変換する。
5図形台形の辺上の点を結んだ直線の交点外部への延長(蝶々型の相似)難。内部で相似を探して線だらけになる罠。
6立体立方体の複雑な切断と体積枠外への三角すい作成と引き算難問。頭の中で立体を思い浮かべようとして限界を迎える。

2. 詳細分析:全問を「作業」で解くための変換手順

第一志望層が直面する壁に対し、当研究所が処方する具体的な手順を「全問」解説する。ひらめきに頼らず、処理しやすい形へ「変換」する合理的なアプローチである。

【大問1】計算の変換処理(力技の回避)

  • 決定ルール:複雑な計算は前から順に解かず、式の構造を見抜いて手数を減らせ。
  • 手順:(1)(2) 複雑なカッコのカタマリを1つの大きな四角(□)として捉え、外側から一段階ずつパズルを解くようにさかのぼる。小数はすべて分数に統一し、計算ミスを防ぐ。計算を進めると、答えは(1)が $\mathbf{7}$、(2)が $\mathbf{\frac{1}{35}}$ となる。(3) $5003 \times 38 + 4998 \times 14 – 5001 \times 33 + 4997 \times 11$これをそのまま筆算で乗り切ろうとするのは時間のロスにつながる。すべての4桁の数を「$5000$」を基準として分解する。$5003$ は「$5000+3$」、$4998$ は「$5000-2$」と捉える。式全体は、$5000$ のまとまりが「$38 + 14 – 33 + 11 = 30$」個あることになり、$5000 \times 30 = 150000$ となる。次にズレの部分(端数)を計算する。$+3 \times 38 = 114$、$-2 \times 14 = -28$、$-1 \times 33 = -33$、$-3 \times 11 = -33$。これらを合計すると $+20$ になる。よって $150000 + 20 = \mathbf{150020}$。筆算に頼らず、式の構造を変換することで安全に答えを出せる。

【大問2】小問集合(割合・図形・集合の変換)

(1) 食塩水:水の蒸発と食塩の追加

  • 手順: 面積図を描く必要はない。「食塩の量」だけを追いかける。A(200g, 15%)に入っている食塩は30g。ここから水が50g蒸発しても食塩は30gのまま、重さが150gになるので濃度は $30 \div 150 = 20\%$ と確定する。Bも濃度20%になったのだから、B(200g)に食塩30g追加した後(全体230g)の食塩量は $230 \times 0.2 = 46\text{g}$。追加する前のBの食塩は $46 – 30 = 16\text{g}$ であり、最初の濃度は $16 \div 200 = \mathbf{8\%}$ と一直線に求まる。

(2) つるかめ算:本数の差が4本

  • 手順: 「150円のAが4本多い場合」と「120円のBが4本多い場合」の2パターンを検証する。Aが4本多いと仮定し、その分の代金600円を合計3300円から引く。残りの2700円は「AとBが同じ本数(1セット270円)」になるので、$2700 \div 270 = 10$セット。つまりBは 10本(Aは14本)と矛盾なく求まる。

(3) 直角三角形の回転移動

  • 手順: 直角三角形ABC($\angle C=90^\circ, \angle B=60^\circ$)をBを中心に30度回転させる。求める面積は「外側の弧(半径AB)」が作るおうぎ形から「内側の弧(半径BC)」が作るおうぎ形を引いたドーナツ型である。式にすると、$(AB \times AB \times 3.14 \times \frac{30}{360}) – (BC \times BC \times 3.14 \times \frac{30}{360})$。これを $3.14 \times \frac{1}{12} \times (AB \times AB – BC \times BC)$ とまとめる。直角三角形において、「一番長い辺の正方形」から「もう1つの辺の正方形」を引くと、残りの辺(AC)の正方形の面積になる法則を利用する。$AB \times AB – BC \times BC = AC \times AC$。AB=6, BC=3より $AC \times AC = 36 – 9 = 27$。よって $27 \times 3.14 \times \frac{1}{12} = \mathbf{7.065\text{cm}^2}$。

(4) 集合とベン図

  • 手順: 全体50人。はさみものりも無いのが7人、よって「少なくとも一方を持つ人」は $50 – 7 = 43$人。「のりだけ」が15人なので、「はさみを持つ人(はさみだけ+両方)」は $43 – 15 = 28$人と確定。「のりを持つ人」=「のりだけ15人 + 両方持つ人」。両方持つ人の最小は0人(このときのり持ちは15人)、最大ははさみを持つ28人全員がのりも持つ場合(のり持ちは $15+28=43$人)。よって 15人以上43人以下 となる。

【大問3】速さ(反射する点の合計距離への変換)

問題の仕掛け: 40mの線分をA(秒速5m)とB(秒速3m)が往復する。

つまずく原因: 反射するたびに進んだ距離を個別に計算して出そうとし、混乱すること。

適用する型: 「2人の合計距離の法則」

  • 手順: 向かい合ってスタートし、線分上を反射して往復する問題は、「2人合わせて線分何本分の距離を進んだか」で処理する。(1) 1回目のすれ違い: 2人合わせて1本分(40m)進んだとき。時間は $40 \div (5+3) = \mathbf{5}$ 秒後。(2) 8回目のすれ違い: 1回目は「1本分」、2回目以降は出会うごとに「2本分(80m)」進む。8回目までに進む合計距離は $40 + 80 \times 7 = 600\text{m}$。時間は $600 \div 8 = \mathbf{75}$ 秒後。(3) 出会い位置の特定: 75秒でAは $5 \times 75 = 375\text{m}$ 移動する。片道40mなので $375 \div 40 = 9$ 余り $15$。Aは端から端までを9回移動し、10回目の移動で15m進んだ場所にいる。奇数回目で反対側の端に到達するので、9回移動した時点でAはスタートの反対側の端にいる。そこからスタート地点に向かって15m戻るので、スタート地点からの距離は $40 – 15 = \mathbf{25\text{m}}$。

【大問4】ニュートン算(式への変換)

問題の仕掛け: 毎分3Lで水が入る容器から、複数台のポンプで水をくみ出す。2台で120分、5台で40分かかる。

つまずく原因: 複雑な状況を面積図に描こうとして混乱すること。

適用する型: 「減少する量の方程式化」

  • 手順: 図を描くのではなく、式へ変換することが確実なルートである。ポンプ1台が1分にくみ出す量をマルイチ(①)とする。2台で120分かかる $\rightarrow$ はじめの水量は $120 \times (② – 3\text{L})$。5台で40分かかる $\rightarrow$ はじめの水量は $40 \times (⑤ – 3\text{L})$。同じ「はじめの水量」なのでイコールで結ぶ。$120$ は $40$ の3倍なので、$(② – 3) \times 3 = ⑤ – 3$ となる。これを解くと ① = 毎分6L。(2) 初期水量: $(2 \times 6 – 3) \times 120 = \mathbf{1080\text{L}}$。(3) 30分以内に空にする台数: 1分間に $1080 \div 30 = 36\text{L}$ 以上減らせばよい。ポンプが $N$ 台なら $N \times 6 – 3 \ge 36 \implies N \times 6 \ge 39$ より $39 \div 6 = 6.5$。よって最低 7台

【大問5】平面図形(外部への延長と比の統一)

問題の仕掛け: 台形ABCD(AD=3, BC=6)の辺AB上に点E、辺CD上に点F、辺AD上に点Gがある。直線DEと直線FGの交点Hについて、GH : HF の比を求める。

つまずく原因: 台形の内部で相似な三角形を自力で見つけ出そうとし、線だらけになって図が崩壊すること。

適用する型: 「外部への延長(蝶々型の相似)」と「比の統一」

  • 手順: 内部に直線を引いてはいけない。直線を枠の外へ延長し、砂時計(蝶々)型の相似へ変換する。第1の延長: 直線FGと辺BCをそれぞれ延長し、交点をXとする。$\triangle DGF \sim \triangle CXF$ (相似比 $DF:FC = 3:2$)より、$CX = \frac{2}{3}\text{cm}$。底辺BXの長さは $6 + \frac{2}{3} = \frac{20}{3}\text{cm}$。第2の延長: 直線DEと辺BCを延長し、交点をYとする。$\triangle ADE \sim \triangle BYE$ (相似比 $AE:EB = 4:1$)より、$BY = \frac{3}{4}\text{cm}$。相似の連鎖: 直線DX(直線FG)と直線DY(直線DE)が交わる点Hにより、$\triangle DGH \sim \triangle XYH$ という大きな蝶々型相似が完成する。底辺の比は $DG : XY = 1 : (\frac{3}{4} + 6 + \frac{2}{3}) = 12 : 89$。したがって $GH : HX = 12 : 89$ となる。比の整数化:線分GX全体を考える。$GH:HX = 12:89$ より、GX全体は比の「$101$」にあたる。一方、点FはGXを $3:2$ に分ける点なので、GX全体は比の「$5$」にあたる。全体を $101$ と $5$ の最小公倍数である「$505$」にそろえる。$GH = 505 \times \frac{12}{101} = 60$。$GF = 505 \times \frac{3}{5} = 303$。求める $HF = GF – GH = 303 – 60 = 243$。(1) よって $GH : HF = 60 : 243 = \mathbf{20 : 81}$。小数を挟まず、整数の作業として処理できる。(2) 面積比についても、底辺の比と相似比を連鎖させることで 303 : 4 が導き出される。

【大問6】空間図形(大きな三角すいへの変換)

問題の仕掛け: 1辺6cmの立方体を、指定された点を通る平面で切断し、頂点Hを含む立体の体積を求める。

つまずく原因: 頭の中で斜めの切り口を想像し、立体の形を思い浮かべようとして限界を迎えること。

適用する型: 「枠外への三角すいの作成と引き算」

  • 手順: 複雑な立体の切断は、頭の中での組み立てを放棄し、枠外に「大きな三角すい」を作る作業へ変換する。(1) 切り口の作図: 同一平面の点を結び、平行な面には平行な線を引くルールに従う。切り口は 六角形。(2) 対称性の利用: 六角形になる切断は立方体の中心を通るため、体積をちょうど半分にする。よって $216 \div 2 = \mathbf{108\text{cm}^3}$。(3) 枠外の三角すいの計算: 頂点Hを含む立体を求めるため、枠外に延長線を引く。左の面(面ADHE)の延長: 頂点Eと点M(AD上、MからDまで2cm)を通る直線を上に延長し、辺HDの延長線と交わる点をZとする。EからMへ奥に4cm進むと高さが6cm上がる。さらに奥へ2cm進んでDの真上(点Z)に到達するには、高さは $6 \times \frac{2}{4} = 3\text{cm}$ 上がる。よってZは、Dから上に3cm、Hから見ると高さ $9\text{cm}$ の位置にある。奥の面(面DCGH)の延長: 点Zと点L(CD上、DからLまで2cm)を通る直線を下に延長し、辺HGの延長線と交わる点をYとする。ZからLへ下に3cm下がる間に右へ2cm進む。さらに下に6cm下がって床の高さ(点Y)に到達するには、右へ $2 \times \frac{6}{3} = 4\text{cm}$ 進む。Lから右に4cm進むと、Dからは右に6cm。これはちょうど頂点Gの位置になる。つまり点Yは頂点Gと一致し、床の切り口は直線EGとなる。大きな三角すいの計算: 頂点Z、底面 $\triangle HEG$ の大きな三角すいができる。底面積は $6 \times 6 \div 2 = 18$、高さは9。体積は $18 \times 9 \div 3 = 54\text{cm}^3$。はみ出しの引き算: ここから、立方体の上の面を突き抜けた「はみ出し部分」を引く。これは頂点Z、底面 $\triangle MDL$ の小さな三角すいである。底面積は $2 \times 2 \div 2 = 2$、高さは3。体積は $2 \times 3 \div 3 = 2\text{cm}^3$。結論: $54 – 2 = \mathbf{52\text{cm}^3}$。空間を想像する力に頼らず、公式と引き算という確実な作業に落とし込む。

3. 結論:合格は才能ではなく「作業」である

東邦大東邦中(後期日程)の算数は、情報処理能力の測定器である。市販の過去問集の解説を読み、「なんとなく解けた」という経験を積んでも、本番の緊張の中では自己流の手法は間違えやすくなる。

難問を前にしたとき、ひらめきを待つのではなく、手持ちの「型(手順)」を用いて処理しやすい形へ変換していく。この客観的なアプローチが、合格へのステップとなる。

【東邦大東邦中・算数攻略のチェックリスト】

  1. まず変換先を決める: 問題を見た瞬間に、筆算を「基準値からの差分」へ、図解を「方程式」へ、立体を「外部の三角すい」へ変換するというゴールを設定する。
  2. 頭の中で考えず、式や平面の図にする: 立体図形や動く点の軌跡を頭の中で想像せず、展開図、外部への延長線、方程式といった「自分が処理できる情報」に変換する訓練を徹底する。
  3. 計算の工夫を常に探す: 前から順番に計算する癖を捨て、分配法則などの「式をまとめる手順」を第一手とする。

過去問演習が「腑に落ちないままの自己流の解き直し」に陥っている場合は、当研究所が提示した手順を反復していただきたい。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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