※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【市販の過去問にない】2024年東邦大東邦中(後期)算数・全問解説:難問を粉砕する「変換処理」の型
東邦大付属東邦中学校・後期入試の算数は、天性のひらめきや計算の体力を競うものではない。与えられた複雑な条件から不要な情報を削ぎ落とし、自分が処理しやすい形へと「変換」する、情報処理能力のテストである。
「じっくり図を描いて考えよう」「気合で最後まで計算しきろう」といった通説は、同校の入試においては後半の難問に使う時間を失う要因となり得る。客観的なデータに基づき構造を分析すれば、難問は小学6年生が本番で実行可能な「変換作業」に置き換えられる。
本記事では、市販の過去問集では詳しい解説が省略されている2024年度後期入試の全貌を分析し、無駄を省いた合理的な手順を公開する。
1. 東邦大東邦中 算数(2024年後期)解法分析・データベース
当研究所が全設問の構造を分解し、間違えやすいポイントと、それに対する戦略的な「型」を整理したものである。
| 大問 | 分野 | 問題の仕掛け(構造) | 初手の手順(型) | つまずく原因 |
| 1-(1)(2) | 計算 | 小数・分数が混在する四則演算と逆算 | 分数への統一と逆算ブロック化 | 基礎。1.25を即座に $5/4$ に変換できるか。 |
| 2-(1) | 規則性 | 小数第29位の数字($6 \div 7$) | 循環小数の周期割り算 | 基礎。$0.857142\dots$ の6桁周期を迷わず割り出す。 |
| 2-(2) | 数と計算 | 小数第2位を四捨五入して2.3になる最大の整数 | 不等式による範囲の確定 | 標準。数式に翻訳して範囲を絞り込む力。 |
| 2-(3) | 割合 | プールに立てた棒の濡れた部分と乾いた部分 | 線分図の等式化(相当算) | 標準。割合の和と長さの和を正しく切り分ける。 |
| 2-(4) | 速さ | バスの追い越し(8分)とすれ違い(6分) | 速さの和・差の比の利用 | 差がつく。ダイヤグラムを描かず、時間の逆比を使う。 |
| 2-(5) | 割合 | 3種類の食塩水(5%, 10%, 18%)の混合 | てんびん法の2段階処理 | 難。AとBを先に混ぜて「仮想の食塩水」を作る。 |
| 3 | 図形 | 平行線を内部に持つ三角形の面積比 | 面積の引き算による等積変形 | 差がつく。底辺と高さが同じ三角形を見つける。 |
| 4 | 論理 | ドットプロットの一部隠ぺいと中央値 | 中央値の定義と不等式の論理 | 難。点数を当てようとせず、人数の範囲で論理を詰める。 |
| 5 | 割合 | 3人での玉のやり取り(割合で渡す) | 残った割合からの逆算 | 差がつく。「渡した量」ではなく「手元に残した割合」で遡る。 |
| 6 | 立体 | 直方体の斜め切断(四角形の面積と体積) | 枠外への三角すいの作成 | 難問。頭の中で切断面を想像せず、外に延長線を引く。 |
| 7 | 場合の数 | 10個のリンゴを3人に分ける | 誘導の読み取りと組み合わせ | 標準。問題文の例から法則を読み取る読解力。 |
2. 詳細分析:全問を「作業」で解くための変換手順
第一志望層が直面する壁に対し、当研究所が処方する具体的な手順を「全問」解説する。見直しがしやすいよう、各大問の冒頭に最終的な解答を明記している。
【大問1】計算の変換処理
【解答】 (1) $1/20$ (2) $1/4$
- 決定ルール:小数はすべて分数に統一し、逆算はカタマリを崩さずに処理せよ。
- 手順:(1) 小数を分数に統一する。$1.25 = 5/4$、$0.25 = 1/4$。カッコ内は $1/6 + 2/15 + 3/40 = 20/120 + 16/120 + 9/120 = 45/120 = 3/8$。式全体は $3/8 \div 5/4 – 1/4 = 3/10 – 1/4 = \mathbf{1/20}$ となる。(2) 逆算はカタマリ(ブロック)として扱う。$10\frac{1}{11} = 111/11$。$(1 – \square) \times 4/3 \div 1.1 = 11 – 111/11 = 10/11$。$(1 – \square) \times 40/33 = 10/11 \implies 1 – \square = 10/11 \times 33/40 = 3/4$。よって $\square = \mathbf{1/4}$。
【大問2】小問集合(情報の整理と変換)
【解答】 (1) $4$ (2) $93$ (3) $160\text{cm}$ (4) 分速$525\text{m}$ (5) $6 : 13$
(1) 循環小数:周期への変換
- 決定ルール:割り算の繰り返しは、周期(ループ)の長さをつかんで割り算せよ。
- 手順: $6 \div 7 = 0.857142\dots$ となり、「857142」の6桁がループする。29番目の数字を知るため、$29 \div 6 = 4$ 余り $5$。ループが4回繰り返された後の5番目の数字なので、答えは 4。
(2) 範囲の確定:不等式への変換
- 手順: 「小数第2位を四捨五入して2.3」になる範囲は $2.25$ 以上 $2.35$ 未満である。ある整数を $X$ とすると、$2.25 \le X \div 40 < 2.35$ と式で表せる。各辺を40倍し $90 \le X < 94$。この範囲に入る最大の整数は 93。
(3) 相当算:式への変換
- 手順: 濡れた部分(全体の $2/5$ と 7cm)と、濡れていない部分(全体の $1/2$ と 9cm)を足すと、全体(1)になる。全体の $(2/5 + 1/2) = 9/10$ に $16\text{cm}$ を足すと全体になるため、残りの $1/10$ が $16\text{cm}$ にあたる。全体は $16 \times 10 = \mathbf{160\text{cm}}$。
(4) 旅人算:比への変換
- 決定ルール:同じ距離を縮める時間の問題は、速さの和・差の逆比を使え。
- 手順: バスの間隔(距離)は常に一定である。追い越されるときは「バスと人の速さの差」で、すれ違うときは「速さの和」で間隔を詰めている。かかる時間の比が $8\text{分} : 6\text{分} = 4 : 3$ なので、速さの(差:和)の比は逆比の $3 : 4$ となる。バスの速さを $B$ とすると、$(B – 75) : (B + 75) = 3 : 4$。$4 \times (B – 75) = 3 \times (B + 75) \implies 4B – 300 = 3B + 225 \implies B = 525$。よって 分速525m。
(5) 食塩水の3種混合:てんびん法
- 手順: まずA(5%)とB(10%)を混ぜる。Aを1、Bを3の割合で混ぜるため、てんびん法で計算すると $(5 \times 1 + 10 \times 3) \div 4 = 8.75\%$ の仮想の食塩水(重さの割合は4)ができる。次に、この「8.75%」と「C(18%)」を混ぜて「12%」にする。12%までの濃度の差は、$12 – 8.75 = 3.25$、$18 – 12 = 6$。重さの比は逆比となり、(A+B):C $= 6 : 3.25 = 24 : 13$。(A+B)の「24」のうち、A単体は全体の $1/4$ なので $24 \div 4 = 6$。よって A:C $= \mathbf{6 : 13}$。
【大問3】図形の面積比
【解答】 (1) $1 : 1$ (2) $6 : 1$
- 決定ルール:平行線にはさまれた図形は、同じ面積の三角形を探して引き算せよ。
- 手順:(1) $PQ$ と $BC$ が平行であるため、$\triangle PBQ$ と $\triangle PQC$ は底辺(PQ)と高さが共通であり、面積が等しい。両者から共通部分である $\triangle PQR$ を引けば、残った $\triangle BRP$ と $\triangle CQR$ の面積は同じになる。よって比は $\mathbf{1:1}$。(2) $AP:PB = 1:2$ より、$PQ:BC = 1:3$。$\triangle PQR$ と $\triangle CBR$ の相似比も $1:3$。面積比を利用し、$\triangle PQR=1$ とおくと、$\triangle BRP=3, \triangle CQR=3, \triangle CBR=9$。台形 $PBCQ$ 全体の面積は $16$ になる。一方、$\triangle APQ$ と $\triangle ABC$ 全体の面積比は相似比の2乗で $1^2 : 3^2 = 1 : 9$。つまり台形 $PBCQ$ は全体の $8/9$ にあたる。$16 \div 8 \times 9 = 18$ が $\triangle ABC$ の面積。$\triangle CQR$ は $3$ なので、$18 : 3 = \mathbf{6:1}$。
【大問4】中央値の論理的解明
【解答】 カ、キ
- 決定ルール:隠されたデータは、点数を当てようとせず「範囲(どこからどこまでか)」の論理で絞り込め。
- 手順: 30人の中央値は「15番目(15)と16番目(16)の平均」である。これが12点ということは、$(15)+(16) = 24$ 点となる。下から点数を数えると、7, 8, 9, 10点が各1人(計4人)。よって5番目(5)は「11点」で確定。グラフで見える15点以上の人数を数えると計11人。よって14点以下の人数は $30-11 = 19$人。15番目と16番目の生徒は、隠れている「12点〜14点」の間に存在する。(15)と(16)の合計が24点になる組み合わせは「12点と12点」等に限られる。カ:「(15)は12以下で、(16)は12以上である」。平均が12である以上、一方が12より小さければ他方は必ず12より大きくなる。よって常に正しい。キ:「12から(15)を引いた値と、(16)から12を引いた値は同じである」。これは $12 – (15) = (16) – 12$、つまり $(15)+(16) = 24$ という事実を数式にしただけである。よって常に正しい。正解は カ、キ。
【大問5】やりとり算(逆算の処理)
【解答】 (1) $80\text{個}$ (2) $70\text{個}$ (3) $84\text{個}$
- 決定ルール:「渡した量」ではなく「手元に残した割合」で後ろからさかのぼれ。
- 手順: 【操作3終了時】Cは玉の $1/2+1/10 = 6/10$ を渡し、手元に $4/10$(つまり $2/5$)を残した。この残りが32個なので、操作3前のCは $32 \div (2/5) = 80$ 個。操作3でCはAに40個、Bに8個渡す。最終的にAはBより20個多くなるため、この操作の直前(操作2終了時点)では、AはBより12個少ない状態であったことが逆算できる。【操作2終了時】Bは $1/5+1/3 = 8/15$ を渡し、$7/15$ を残した。これが操作1終了後の「B=90個」から分配されたもの。つまりBはAに18個、Cに30個渡し、手元に42個残した。【操作1終了時】Aは $1/6+1/2 = 2/3$ を渡し、$1/3$ を残した。この逆算を連鎖させることで、初期値 A=36, B=84, C=32 が確定する。
【大問6】空間図形(大きな三角すいへの変換)
【解答】 (1) $16\text{cm}^2$ (2) $17\frac{1}{3}\text{cm}^3$
- 決定ルール:複雑な立体の切断は、頭の中での想像を捨て、枠外に延長線を引いて大きな三角すいを作れ。
- 手順: この問題では、切断面と辺ADが交わる点をQ、外側に延長線を引いて作る仮想の頂点をVとして解説する。(1) 前面の切断面である直線 $PF$ と、側面の切断面を延長する。点 $P$ は辺 $AB$ を $1:2$ に分けるので、$AP=1\text{cm}$。$P$ から $F$ へ向かう直線の傾きを考えると、手前に2cm進むごとに高さが4cm下がる。これを逆算し、奥へ1cm進んで面ADHEに到達させた場合、高さは2cm上がる。つまり、頂点 $E$ の真上2cmの位置にある仮想の頂点 $V$ で交わることがわかる。この論理から、四角形 $AEHQ$ は台形となり、面積は $(2+6) \times 4 \div 2 = \mathbf{16\text{cm}^2}$ と計算できる。(2) 求める立体は、大きな三角すい $V-EFH$ から、上部の小さな三角すい $V-APQ$ を切り取った形である。全体の三角すい:底面積 $3 \times 6 \div 2 = 9$、高さ $6$($4+2$)$\implies 9 \times 6 \div 3 = 18\text{cm}^3$。上部の三角すい:底面積 $1 \times 2 \div 2 = 1$、高さ $2 \implies 1 \times 2 \div 3 = 2/3\text{cm}^3$。よって $18 – 2/3 = \mathbf{17\frac{1}{3} \text{cm}^3}$。
【大問7】場合の数(組み合わせの法則)
【解答】 (1) ア=3, イ=2, ウ=1, エ=10, オ=66 (2) 36通り
- 決定ルール:会話文がある問題は、例で示されたルール(法則)をなぞって計算せよ。
- 手順: (1) Cの取り分を固定してAとBの分け方を数える。リンゴ3個のとき、Cが1個なら残りは2個。これをAとBで分ける方法は、(2,0)(1,1)(0,2)の3通り(ア=3)。Cが2個なら残り1個なので2通り(イ=2)。Cが3個なら残り0個なので1通り(ウ=1)。合計は $4+3+2+1=10$ 通り(エ=10)。この法則を10個のリンゴに当てはめると、$11+10+\dots+1 = 66$ 通り(オ=66)。(2) 「少なくとも1個はもらう」という条件は、「最初に1個ずつ配ってしまい、残りを自由に分ける」という手順に変換する。10個から3人に1個ずつ配ると残り7個。7個を自由に分ける方法は、先ほどの法則に従い $8+7+\dots+1 = \mathbf{36\text{通り}}$。
3. 結論:東邦大東邦中の「型」と今後の対策
2024年度から2026年度までの分析を通して、東邦大東邦中の算数で求められる明確な基準が見えてくる。それは、「気合で計算する」「頭の中で立体を思い浮かべる」といった感覚的なアプローチが通用しにくく、情報を客観的で処理しやすい形へ置き換える能力が求められているということである。
【東邦大東邦中・算数攻略のチェックリスト】
- まず変換先を決める: 問題を見た瞬間に、筆算を「分数」へ、図形を「面積の引き算」へ、立体を「枠外の三角すい」へ変換するというゴールを設定する。
- 図形を数式として捉える: 立体図形の切断などを頭の中で想像せず、直線の傾きや方程式といった「自分が計算できる情報」に置き換える訓練を徹底する。
- 計算の工夫を常に探す: 前から順番に計算する癖を捨て、割合は残りの比率で処理するなどの「手間を減らす手順」を第一手とする。
過去問演習が「腑に落ちないままの自己流の解き直し」に陥っている場合は、当研究所が提示した手順を反復し、合理的な処理能力を養っていただきたい。

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