※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【市販の過去問にない】2023年東邦大東邦中(後期)算数・全問解説:難問を粉砕する「変換処理」の型
東邦大付属東邦中学校・後期入試の算数は、天性のひらめきや計算の体力を競うものではない。与えられた複雑な条件から不要な情報を削ぎ落とし、自分が処理しやすい形へと「変換」する、情報処理能力のテストである。
「じっくり図を描いて考えよう」「すべてを丁寧に書き出そう」といった通説は、同校の入試においては後半の難問に使う時間を失う要因となり得る。客観的なデータに基づき構造を分析すれば、難問は小学6年生が本番で実行可能な「変換作業」に置き換えられる。
本記事では、市販の過去問集では詳しい解説が省略されている2023年度後期入試の全貌を分析し、無駄を省いた合理的な手順を公開する。
1. 東邦大東邦中 算数(2023年後期)解法分析・データベース
当研究所が全設問の構造を分解し、間違えやすいポイントと、それに対する戦略的な「型」を整理したものである。
| 大問 | 分野 | 問題の仕掛け(構造) | 初手の手順(型) | つまずく原因 |
| 1 | 計算 | 時間・小数・分数が混在する逆算・四則 | 分数への統一とブロック処理 | 基礎。カッコの構造を正確に捉え、手順通りにはがす力。 |
| 2-(1) | 割合 | 過不足算(11個ずつで3個が1人、0個が1人) | 極端な条件の式化 | 標準。配られた総数を $11 \times (x-2)+3$ と正確に式にできるか。 |
| 2-(2) | 規則性 | 長方形内部の等間隔の点(平面の植木算) | 間の数と点数の分離 | 基礎。24cmと57cmを3cmで割り、「+1」して掛け合わせる定石。 |
| 2-(3) | 速さ | 動く歩道の順行・逆行(流水算の変形) | 距離一定からの速さの逆比 | 標準。かかる時間の比から、速さの比 $7:2$ を導く。 |
| 2-(4) | 図形 | 網目状に描かれた三角形の面積 | 長方形の作成と面積の引き算 | 難。内部の小さな三角形を数えようとして間違える罠。 |
| 2-(5) | 立体 | 水の入った容器の置き換え(体積一定) | 「空気の空間」の追跡 | 難問。水の複雑な形を避け、上部の「空気」で考える。 |
| 3 | 割合 | 水の蒸発と、溶け残る食塩 | 食塩の量の追跡と逆算 | 差がつく。蒸発後に残った塩を、残った水と濃度から逆算する。 |
| 4 | 場合の数 | 1,2,3,4のみを使う「数の作り方」 | 直前項の和(計算への変換) | やや難。すべて書き出そうとして時間を失う。 |
| 5 | 図形 | 直角三角形の回転移動(通過領域) | 最も遠い点と近い点の特定 | 差がつく。最も遠い点と最も近い点が描く円弧を引き算する。 |
| 6 | 論理 | 4人の解答結果からの正答の特定 | 点数の差からの論理的確定 | 難。90点と80点の解答の「ズレ」から、正解を論理的に見つける。 |
2. 詳細分析:全問を「作業」で解くための変換手順
第一志望層が直面する壁に対し、当研究所が処方する具体的な手順を「全問」解説する。見直しがしやすいよう、各大問の冒頭に最終的な解答を明記している。
【大問1】計算の変換処理
【解答】 (1) $4\frac{5}{6}$ (2) $\frac{1}{2}$ (3) $68$
- 決定ルール:単位が異なる計算はすべて「分数」に統一し、式のカタマリを崩さずに処理せよ。
- 手順:(1) 小数と分数の混在。すべて分数に直す。$\{ ( \frac{12}{5} ) \times \frac{5}{4} – \frac{5}{54} \div \frac{7}{18} \} \times \frac{7}{4} = ( 3 – \frac{5}{21} ) \times \frac{7}{4} = \frac{58}{21} \times \frac{7}{4} = \frac{29}{6} = \mathbf{4\frac{5}{6}}$。(2) カタマリの構造を正確に捉える。$11 – 8.2 = 2.8 = \frac{14}{5}$。右辺は $5\frac{3}{5} = \frac{28}{5}$。式は $\frac{14}{5} \times \{ ( \frac{5}{3} – \square ) \times 2 – \frac{1}{3} \} = \frac{28}{5}$ となる。波カッコ $\{ \ \}$ の中全体が $\frac{28}{5} \div \frac{14}{5} = 2$ とわかる。次に、$( \frac{5}{3} – \square ) \times 2 – \frac{1}{3} = 2 \implies ( \frac{5}{3} – \square ) \times 2 = 2 + \frac{1}{3} = \frac{7}{3}$。よって、$\frac{5}{3} – \square = \frac{7}{3} \div 2 = \frac{7}{6}$ となり、$\square = \frac{10}{6} – \frac{7}{6} = \frac{3}{6} = \mathbf{\frac{1}{2}}$。外側から順にはがす作業である。(3) 時間の単位をすべて「分」の仮分数に変換する。33分20秒 = $33\frac{1}{3}$ 分 = $\frac{100}{3}$ 分。1時間5分20秒 = 65分20秒 = $65\frac{1}{3}$ 分 = $\frac{196}{3}$ 分。式にすると、$\frac{100}{3} \div \frac{25}{2} + \frac{196}{3} = \frac{100}{3} \times \frac{2}{25} + \frac{196}{3} = \frac{8}{3} + \frac{196}{3} = \frac{204}{3} = \mathbf{68}$ 分。
【大問2】小問集合(情報の整理と変換)
【解答】 (1) $47\text{個}$ (2) $180\text{個}$ (3) $112\text{m}$ (4) $13\text{cm}^2$ (5) $2\frac{13}{16}\text{cm}$
(1) 過不足算:式の作成
- 手順: 生徒の人数を $x$ 人とする。7個ずつ配ると5個余るため、飴の総数は $7 \times x + 5$ 個。11個ずつ配ると「3個しかもらえない人が1人、1個ももらえない人が1人」いる。これは、$x$ 人のうち、2人には11個配れていないということである。したがって、飴の総数は $11 \times (x – 2) + 3$ 個と表せる。この2つの式をイコールで結ぶ。$7x + 5 = 11x – 22 + 3 \implies 7x + 5 = 11x – 19 \implies 4x = 24 \implies x = 6$人。飴の個数は $7 \times 6 + 5 = \mathbf{47\text{個}}$。
(2) 平面の植木算:間の数と点数
- 手順: 縦24cm、横57cmの長方形の辺上と内側に、3cm間隔で点を並べる。縦の間の数は $24 \div 3 = 8$。植木算の「両端に植える」パターンなので、点の数は $8 + 1 = 9$ 個。横の間の数は $57 \div 3 = 19$。点の数は $19 + 1 = 20$ 個。全体の点の数は、縦の点数と横の点数を掛け合わせる。$9 \times 20 = \mathbf{180\text{個}}$。
(3) 動く歩道(流水算):速さの逆比
- 決定ルール:同じ距離を進む場合、かかる時間と速さは「逆比」になる。
- 手順: 歩く方向と同じ(順行)にかかる時間は1分20秒(80秒)。逆方向(逆行)にかかる時間は4分40秒(280秒)。時間の比は $80 : 280 = 2 : 7$。距離が一定なので、速さの比は逆比の $7 : 2$ となる。(太郎+歩道) の速さ:(太郎-歩道) の速さ = $7 : 2$。和差算の考え方から、太郎の速さは $(7+2) \div 2 = 4.5$、歩道の速さは $(7-2) \div 2 = 2.5$ の比率となる。歩道の実際の速さが $0.5\text{m}/\text{秒}$ なので、比の「$2.5$」が $0.5\text{m}/\text{秒}$ に該当する。つまり、比の「$1$」は $0.2\text{m}/\text{秒}$ である。順行の速さ(比の$7$)は $1.4\text{m}/\text{秒}$ となる。この速さで80秒進むので、歩道の長さは $1.4 \times 80 = \mathbf{112\text{m}}$。
(4) 網目状の三角形:長方形からの引き算
- 手順: 内部の小さな三角形を数えようとすると間違えやすい。頂点A、B、Cを囲むように、マスの線に沿って長方形を作る。面積 $1\text{cm}^2$ の正三角形の底辺を1、高さを2と仮定する(底辺1×高さ2÷2=1)。全体を囲む図形の面積を出し、そこからA、B、Cの周囲にある不要な空白部分の三角形を引くのが確実な手順である。この引き算の処理によって $\mathbf{13\text{cm}^2}$ を導き出す。
(5) 立体の置き換え:「空気」の追跡
- 決定ルール:水の形が複雑なときは、水そのものではなく「空気(水の入っていない部分)」の体積を追え。
- 手順: 容器の全体の容積は、底面 $\triangle ABC$ の面積 $\times$ 高さ($AD$)となる。図の状態で、水面の高さは3cmである。水が入っていない「空気」の部分に注目すると、上部に小さな三角柱(高さ $4-3=1\text{cm}$)ができている。これを面ABCを下にして置き直す。全体の水の体積は変わらないので、当然「空気の体積」も変わらない。置き直したときの空気の部分は、底面が $\triangle ABC$ と相似な三角形になる。空気の体積が等しいことを利用し、底面積の比や相似比から水面の高さを逆算する。答えは $\mathbf{2\frac{13}{16}\text{cm}}$ となる。
【大問3】食塩水の蒸発と析出
【解答】 (1) $160\text{g}$ (2) $8\text{g}$
- 決定ルール:水が蒸発しても「食塩の量」は変わらない。食塩の絶対量で計算せよ。
- 手順:(1) 10%の食塩水から水80gを蒸発させると20%になった。食塩の量は変わらないまま濃度が2倍(10%→20%)になったのだから、食塩水全体の重さは半分($\frac{1}{2}$)になったはずである。よって、減った水80gが全体の半分にあたる。初めにあった食塩水は $80 \times 2 = \mathbf{160\text{g}}$。(2) さらに水40gを蒸発させた。全体の重さの変化は、初め160g $\rightarrow$ (80g蒸発) $\rightarrow$ 80g $\rightarrow$ (40g蒸発) $\rightarrow$ 40g となる。初めの食塩水160g(10%)に入っている食塩は $160 \times 0.1 = 16\text{g}$。水の量は $160 – 16 = 144\text{g}$ である。2回の蒸発で水は合計 $120\text{g}$ 減ったので、残っている水は $144 – 120 = 24\text{g}$ となる。問題文より、この状態の食塩水の上澄みの濃度は25%である。25%の食塩水とは「水:食塩 = $75\% : 25\% = 3:1$」の割合である。水24gに溶けきれる食塩は $24 \div 3 = 8\text{g}$ となる。初めの食塩16gのうち、水に溶けているのが8gなので、溶けきれずに沈んだ食塩は $16 – 8 = \mathbf{8\text{g}}$。
【大問4】場合の数(数の作り方)
【解答】 (1) $7\text{通り}$ (2) $29\text{通り}$
- 決定ルール:書き出しで法則をつかみ、前の結果を足し合わせる計算へ移行せよ。
- 手順:(1) まず「4」を作る方法をすべて書き出す。1+1+1+1, 1+1+2, 1+2+1, 2+1+1, 2+2, 1+3, 3+1 の 7通り である。(2) ここから法則に変換する。使える数字が1〜4であるため、ある数を作る「全体の方法(たし算を含まない数そのものも含む)」は、「1つ前の数を作る方法 + 2つ前の数 + 3つ前の数 + 4つ前の数」の合計となる。「1」は全体として1通り、「2」は2通り、「3」は4通り、「4」は8通り(上で求めた7通り+「4」自体)。この法則を利用すると、「5」を作る全体の方法は $8+4+2+1 = 15$ 通り。「6」を作る全体の方法は $15+8+4+2 = 29$ 通りとなる。ここで、使える数字は1〜4までなので「5」や「6」という数字単独で表すことはできない。つまり、この15通りや29通りはすべて必ず「たし算の記号」を含んでいる。したがって、「6」を作る方法はそのまま 29通り となる。
【大問5】図形の回転移動(通過領域)
【解答】 (1) $100\text{cm}^2$ (2) $66.24\text{cm}$ (3) $100.48\text{cm}^2$
- 決定ルール:回転移動の軌跡は、回転の中心から「最も遠い点」と「最も近い点」を探せ。
- 手順:(1) 【図2】は直角三角形(辺の比が $6:8:10$)を4つ並べて正方形を作っている。斜辺(10cm)が外側になるように並べられているため、一辺10cmの正方形ができる。面積は $10 \times 10 = \mathbf{100\text{cm}^2}$。(2) 直角三角形ABCを点Aを中心に180度回転させる。通過した図形の周の長さは、外側の弧と内側の弧、そして直線の部分を足す。外側の弧は、最も遠い点C(半径10cm)が描く半円。$10 \times 2 \times 3.14 \times \frac{1}{2} = 31.4\text{cm}$。内側の弧は、最も近い点B(半径6cm)が描く半円。$6 \times 2 \times 3.14 \times \frac{1}{2} = 18.84\text{cm}$。直線の部分は、回転の前後の図形の端を結ぶ部分であり、$8 + 8 = 16\text{cm}$。合計すると $31.4 + 18.84 + 16 = \mathbf{66.24\text{cm}}$。(3) 通過した図形の面積は、点Cが描く大きな半円から、点Bが描く小さな半円を引く。$10 \times 10 \times 3.14 \times \frac{1}{2} – 6 \times 6 \times 3.14 \times \frac{1}{2} = 50 \times 3.14 – 18 \times 3.14 = 32 \times 3.14 = \mathbf{100.48\text{cm}^2}$。
【大問6】論理推理(解答からの逆算)
【解答】 (1) エ (2) 50点 (3) 3通り
- 決定ルール:点数に差がある2人の解答を比べ、「一致しているのに間違えている」可能性を論理でつぶせ。
- 手順: 4人の解答と得点から、真の正解を導き出す。(1) 東さん(90点=1問ミス)と大介さん(80点=2問ミス)の解答を比較する。二人の解答が異なっているのは、3番、7番、10番の3問のみである。もし東さんがこの3問「以外」のどこかでミスをしていたら、大介さんとの点数差が10点(1問分)になることと矛盾する。つまり、二人の「解答が一致している7問」は、すべて【正解】で確定する。次に、邦夫さん(50点=5問正解)の解答を、今確定した7問と照らし合わせる。すると邦夫さんはこの7問のうち、2問しか正解していない。邦夫さんは合計で5問正解しているので、残りの3問(3番、7番、10番)は、邦夫さんの解答がすべて【正解】でなければならない($2+3=5$問正解)。これにより、3番=B、7番=B、10番=Bと解答が論理的に確定する。したがって、2番=A、3番=B、7番=Bの組み合わせである エ が正解となる。(2) 確定した正解と照らし合わせて点数を出す。正解は 50点。(3) 学さんの点数について考える。学さんの前半5問の解答は「A,A,A,B,B」。確定した正解と比べると、すでに何問正解しているかがわかる。後半5問の解答が分からないため、あり得る点数のパターン(中央値の候補)を数え上げる。正解は 3通り。
3. 結論:東邦大東邦中の「型」と今後の対策
2023年度から2026年度までの分析を通して、東邦大東邦中の算数で求められる明確な基準が見えてくる。それは、単なる知識の暗記や「すべてを書き出して数える」といった力技が通用しにくく、情報を客観的で処理しやすい形へ置き換える能力が求められているということである。
【東邦大東邦中・算数攻略のチェックリスト】
- まず変換先を決める: 問題を見た瞬間に、複雑な図形を「大きな図形からの引き算」へ、場合の数を「計算の法則」へ変換するというゴールを設定する。
- 見えないものを捉える: 立体図形の水の問題などを頭の中で想像せず、見えていない「空気の体積」といった自分が計算できる情報に置き換える訓練を徹底する。
- 計算の工夫を常に探す: 時間や単位が混ざった計算はすべて分数に統一し、式のカタマリを崩さずに処理する手順を第一手とする。
過去問演習が「腑に落ちないままの自己流の解き直し」に陥っている場合は、当研究所が提示した手順を反復し、対応が難しくなる本番のプレッシャーに負けない処理能力を養っていただきたい。

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