【学習論】復習は「小まめ」にするな。泥だらけで「一周」せよ。――完璧主義という罠について――

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

学習相談において、最も頻出する論点の一つが「復習のタイミング」である。

「その日のうちに復習すべきか」「週末にまとめるべきか」。

ここで、エビングハウスの忘却曲線を持ち出し、「人間は忘れる生き物だ。だから小まめに復習して記憶を維持せよ」と説く指導は多い。一般論としては正しい。

だが、難関校(渋幕・県立千葉・県船など)を狙う学習の“実務”としては、この常識を一度疑う必要がある。

結論から言う。

理解系の学習(数学・理科・歴史など)においては、「小まめな復習」にこだわるな。まずは雑でもいいから、最速で一周せよ。

今回は、真面目な受験生ほど陥りやすい「完璧主義の罠」と、当研究所が推奨する「レイヤー(重ね塗り)学習法」について定義する。

1. 「第1章を完璧にしてから進む」ルールが、受験生を失速させる

「第1章を完璧に理解してからでないと、第2章に進んではいけない」

この律儀なルールが、多くの受験生の速度を奪う。

数学・理科・歴史は、ドラマや映画と同じでストーリー(構造)を持っている。序盤に出てくる“難解な道具”は、後半の展開を知って初めて意味がつながるように設計されているのだ。

にもかかわらず、第1章の細部に時間を使いすぎると、いつまで経っても結末に到達しない。

結果として、細部(木)だけを眺め、全体像(森)を掴めないまま本番を迎えることになる。これでは勝負にならない。

2. 具体例:勉強における「伏線回収」

この「後から気づく」という現象を、具体的な教科で見てみよう。

① 英語:5文型の正体

中学で学ぶ5文型(SVO/SVOCなど)は、学習中は無味乾燥に感じやすい。「記号を振って何になる」「単語の意味が分かれば読める」と思うだろう。

しかし、長文読解の段階に入ると景色が一変する。

たとえば make 一つでも、後ろに何が来るかで意味が激変する。「作る(SVO)」なのか、「〜させる(SVOC)」なのか。

文型とは、単語の意味を特定するためのルールブックだったのだ。

この“腑に落ちる瞬間”は、文法テキストだけを睨んでいる間には訪れにくい。森(長文)に出て初めて、道具(文法)の価値が見事に回収される。

② 数学:因数分解の目的

中3で習う因数分解も同じである。式変形を繰り返すだけの練習は、単体では苦行に見える。

だが、その後に二次方程式に出会った瞬間、すべてがつながる。「$=0$」を作って解を出すために、因数分解が唯一の武器になるからだ。

もし「因数分解の意味が分かるまで進まない」と止まっていたら、その意味は永遠に見えない。先に進むことだけが、過去の学びの価値を確定させるのである。

3. 学習は「ペンキの重ね塗り」である(レイヤー学習法)

当研究所では、この学習プロセスを「画像のレイヤー(重ね塗り)」と定義している。

多くの生徒は、左端から少しずつ、高画質で完璧に描こうとする。だが、それは時間がかかる上に視野が狭くなる。

正しい手順は次の通りだ。

【1周目(下地塗り)】

不明点があっても立ち止まらず、とにかく最後まで走り抜ける。

目的は、全体の見取り図(薄い下地)を脳内に作ることだ。理解度は50%でよい。「なんとなくこういう話だ」という低解像度の状態でゴールすることが重要だ。

【2周目(本塗り)】

全体像を見た状態で最初に戻る。すると脳は「情報の置き場所」を知っているため、1周目とは別次元の速度と深さで理解が進む。

一気に解像度が上がる感覚だ。勝負はこの2周目で決まる。

最初から完璧を目指してはいけない。

まずは泥だらけでもいいから、ゴールテープを切れ。

4. 科目で戦略を分ける(ここが誤解されやすい)

ここで重要な注意がある。

「小まめな復習をするな」という話は、すべての学習に当てはまるわけではない。学習対象の性質によって戦略を分ける必要がある。

  • 構造を理解する科目(数学・理科・歴史・公民の体系分野など)→ 一通り進んでから戻る(全体俯瞰型)因果関係や体系が理解の土台になる。だからこそ、オチ(全体像)を知ってからの方が圧倒的に速い。
  • 技能・反射を鍛える科目(英単語・計算・漢字など)→ 毎日小まめにやる(単純接触型)これらは理屈ではなく反射神経である。ここでは「量」と「頻度」が正義になる。

結論

もし今、「テキストが進まない」「前を忘れるのが怖い」と悩み、進むことを恐れているなら、勇気を持ってページをめくるべきだ。

「忘れてもいい。前に進め。」

それが結果として、最強の復習(全体構造の理解)への最短距離になる。

立ち止まるな。走り抜けろ。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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