※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【2025年 市川高校・大問3】英語物語文は「単なるあらすじ追跡」のテストではない。「文法・構文と論理処理のパズル」である。
Introduction:通説の否定と失点パターンの根本原因
市川高校の英語物語文(大問3)において、「登場人物の気持ちを想像する」「会話の文脈から単語の意味をなんとなく推測する」といった小説を読むようなアプローチは、本番で大きく失点する危険なパターンである。
「物語文は情景を思い浮かべて読め」といった指導は、難関私立の入試構造を捉えきれていない一般論に過ぎない。本校の物語文が真に要求しているのは、文学的な感受性ではない 。口語調のセリフの裏に隠された「高校レベルの構文(make + O + 原形、so ~ that ...、Neither + 助動詞 + S など)」を見抜く力 。そして、倒置や省略の復元、指示語の直前回収、句読点が示す関係性、会話の因果や後続行動からの逆算といった「精緻な論理処理能力」である 。この事実を知らず、なんとなくの文脈推測に頼る受験生は、出題者が仕掛けた記述問題や整序問題で確実に足元をすくわれる。
Macro Analysis:2025年 大問3の構造分解
2025年度の大問3は、有名な小説『プリンセス・ダイアリー』からの抜粋である 。一見すると口語調でテンポ良く読み進められそうな物語文に見えるが、これが罠である 。
実際の英文には、高校レベルの標準〜やや難レベルの構文が随所に散りばめられており、文法的な骨格を見抜く力が如実に問われる良問となっている 。さらに、会話の空白を埋める因果関係の推測や、登場人物の後続行動から手前の事実を逆算する処理も求められる 。つまり、この大問を攻略するためのマクロ戦略は「感情移入」ではなく、「文法・構文に加え、指示語、句読点、会話の因果を追う論理処理を実行すること」である 。
Micro Analysis & Strategy:攻略の「型」と決定ルール
当研究所が提唱する「読解の処理手順」に沿って、本問で受験生が実行すべき具体的な解法の型を解説する 。特に構文把握や論理処理の力が試される設問を中心に解剖する。
1. 動詞の語法から骨格を予測する:第5文型のパズル(問4)
語句整序問題において、日本語の訳に合わせて適当に単語をつなぎ合わせるのは素人のやることだ。
- 【決定ルール】:整序問題は「動詞の語法」から文の骨格(SVOC等)を確定させよ 。
- 実践: 選択肢の中にある動詞
madeに注目し、後ろに「O(目的語)+ C(原形不定詞)」をとる「OにCさせる」という第5文型(SVOC)の枠組みを予測する 。SVOCのOとCの間には、必ず「主語→述語(S→P)」の関係が成り立つという絶対ルールがある 。これに従い、「my whole body(私の全身が)」「go jumping up(跳びあがる)」という構造を論理的に組み立て、made my whole body go jumping up out ofという正解を導き出す 。
2. 構文シグナルの待ち伏せと修飾関係の処理(問6)
下線部和訳問題は、単語の直訳を並べるテストではない。隠された構文を抽出し、日本語に正しく反映させるテストである。
- 【決定ルール】:特定のシグナル(soなど)から後続の構文を待ち伏せし、修飾のカタマリを保持せよ 。
- 実践: 文を前から読んでいき
so oftenを見た瞬間に、後ろに接続詞のthatが来ることを予測し、so ~ that...(とても〜なので…)の因果関係の枠組みを確定させる 。さらにbecause節の中のwhoが関係代名詞であり、直前のa personを修飾している構造を正確に把握する 。「彼が(とても頻繁に飛行機に乗るので良いサービスを受けるような)人だったから」と、名詞にかかる修飾のカタマリを崩さずに日本語へ落とし込む冷徹な処理が必要だ 。
3. 指示語の具体化と省略・倒置の復元(問7・問8)
物語特有の「あれ」「これ」といった指示語や、会話特有の「省略」を感覚で補ってはならない。
- 【決定ルール】:指示語と省略の正体は、必ず「直前の文・構造」から論理的に特定せよ 。
- 実践(問7):
do thisという指示語の内容を答える際、遠くの文脈を感覚で探してはいけない 。直前の文から「中に入れてもらえるか確認するために事前に電話する」や「店が正式に開店する前か、閉店した後に私を連れて行く」という事実を拾い上げる 。これらを統合し、「開店時間前や閉店時間後に買い物ができるよう、事前に電話をして確認すること」というVIP待遇の行動全体を過不足なくまとめる手順が求められる 。 - 実践(問8):
Neither had my motherという一文。否定の副詞が先頭に出たことで後ろが疑問文の語順(倒置)になっており、「Sもまた〜ない」を意味する高度な構文である 。これをeitherを用いた普通の文に書き換える際、省略されている動詞のカタマリを直前にある同類の言葉(heard of Genovia)から探し出し、形を整えてnever heard of Genoviaと復元する処理が必要である 。
4. 記号と行動から会話の因果を追う(問1・問5・問9)
市川高校では、句読点(パンクチュエーション)や登場人物の行動も重要な論理マーカーとして機能する。
- 【決定ルール】:コロン(:)は「具体化・理由」の合図であり、行動の矛盾は「後続の事実」から逆算せよ 。
- 実践(問1・問9): 主人公が「恐ろしいこと」や「私には(チップを払う)金銭的な余裕がある」と言い切る文の末尾にコロン(:)が置かれている 。これは直後にその「具体例」や「理由」が入るという明確なサインである 。直後の「しゃっくり」や、手前の「お父さんが王子様だから(
My dad is a prince)」という事実を論理的にはめ込む 。 - 実践(問5): 父から係員へのチップとして5ドルを受け取るが、「係員に5ドルなんて!(高すぎる)」と強い不満を抱く描写がある 。本当に渡したのか? 物語の終盤で「係員には1ドル渡すつもりだ」と発言している事実から逆算し、残りの5ドルは「自分のポケットにしまった」と論理的に推測する 。
Conclusion & Action Checklist:才能ではなく作業である
市川高校の物語文読解は、英語圏の生活経験や読書量で決まるものではない。使用されている文法・構文のルールを適用し、修飾関係や省略、会話の論理展開をパズルのように紐解いていく冷徹な「作業」である 。この事実を受け入れ、感覚的な読解を捨てた者だけが、安定した得点力を手に入れることができる。
今日からすべきアクションは以下の3点である。
- 動詞の語法と重要構文の暗記: 整序問題の起点となる
make、findなど第5文型(SVOC)をとる動詞の語法と、so ~ that...やNeither + 助動詞 + Sなどの構文を完全に暗記し、瞬時に引き出せるようにする。 - 指示語と省略の直前回収ルール:
thisなどの指示語や文の省略に出会った際、なんとなく訳すのをやめ、必ず「直前の文から該当箇所を探して矢印で結ぶ」作業を徹底する。 - 記号(コロン・ダッシュ)の機能の徹底: 長文演習において、コロン(:)やダッシュ(—)を見つけたら丸で囲み、「イコール」や「理由・具体例の提示」という論理マーカーとして処理する手順をルーティンとする。

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