【千葉県公立入試】物理の「自滅」メカニズム解剖~運動とエネルギー・過去14年分の分析報告~

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

序論:それはケアレスミスではなく「誤診」である

「計算ミスをしました」「問題文を読み違えました」。

模試や過去問演習の後、多くの受験生はそう言って自己診断を下す。

だが断言しよう。

物理の失点の多くは、単なる“うっかり”ではない。あるのは、「現象に対する認識の歪み(病理)」である。

我々「習志野受験研究所」は、直近の令和7年(2025年)から、現行課程への移行期である平成24年(2012年)まで、過去14年分・全13回の千葉県公立入試「運動とエネルギー」分野を徹底的に解剖した。

そこから浮かび上がってきたのは、年度が変わっても繰り返される、典型的な「自滅パターン」である。

本稿では、その敗因を4つのカテゴリーに分類し、報告する。

自分がどのパターンで脱落する予備軍なのか、冷静に確認されたい。


病理①:アリストテレスの呪い(力の誤認)

【代表的症例:2016年後期、2020年後期】

紀元前の哲学者アリストテレスは言った。

「物体が動き続けるには、力が働き続けなければならない」と。

そして残念ながら、千葉県の受験生の一定数も、この直感から抜け出せていない。

2016年後期・設問(2)を見てみよう。

台車がおもりに引かれて加速した後、おもりが床につき、台車だけが等速直線運動をする場面だ。

ここで多くの生徒が、「動いているのだから、動かす力が働いているはずだ」という選択肢を選び、失点する。

処方箋

  • 加速・減速しているとき: 運動方向の合力が0ではない(合力 $\neq 0$)
  • 止まっている/等速直線運動のとき: 運動方向の合力は0(合力 $= 0$)

重要なのは、「動いている=力がある」ではない。

正しい定義は、「運動状態が変化する=合力がある」である。

手が離れたボールに推進力は残らない。あるのは「慣性」という名の惰性だけだ。

この“力の不在”を認められない者は、物理の入り口で躓くことになる。


病理②:グラフアレルギー(視覚情報の不一致)

【代表的症例:2017年後期】

関数への苦手意識が、物理の失点に直結するケースである。

2017年後期・設問(4)では、「小球の位置(距離)」と「運動エネルギー」の関係を選ばせた。

ここで多くの生徒は、斜面を下るにつれてスピードが上がる様子だけを思い浮かべ、“上がり方が曲線っぽい”という感覚で二次関数のグラフを選んで自滅する。

処方箋

  • 仕事の原理: $エネルギー(仕事)=力 \times 距離$ である。
  • 斜面上では、引く力(重力の分力)は一定である。
  • ゆえに、距離が増えればエネルギーは 比例(直線) して増える。

ここで分岐点は一つ。

もし横軸が「時間」なら曲線になり得る。しかし、この問題の横軸は 「位置(距離)」 である。

軸の定義を確認せず、脳内イメージだけで選ぶ態度は、科学的思考の放棄に他ならない。


病理③:単位変換という名の「衛生観念」

【代表的症例:2018年後期、2013年後期】

これは能力以前の「作法」の問題である。

2018年後期・設問(3)。質量30g、高さ20cm。これを公式に入れて計算せよ。

ここで「$30 \times 20 = 600$」などと書いた瞬間、その答案は救いようのない誤謬に陥る。

処方箋

  • 質量: g(グラム)はそのまま使わない。kgまたはNに直す。
    • ※入試理科では重力加速度を $10\text{m/s}^2$ とする近似ルールがあるため、通常 $100\text{g} \fallingdotseq 1\text{N}$ として扱ってよい。
  • 距離: cm(センチ)はそのまま使わない。mに直す。

この“下処理”は、外科医が手術前に手を洗うのと同じである。

単位変換せずに公式を使うのは、ただの運任せだ。このミスを「うっかり」で済ませている限り、偏差値60の壁は越えられない。


病理④:複合マシンの思考停止

【代表的症例:2014年後期、2020年前期】

「斜面」だけなら解ける。「滑車」だけなら解ける。

だが、2014年後期のように「斜面+動滑車」という複合問題になると、脳が停止する。

複数の要素が絡んだ瞬間、公式選択で迷い、処理が崩壊するのだ。

処方箋

複雑な問題など存在しない。あるのは 「単純な問題が重なっている」 だけである。

  1. まず「斜面」として必要な力を出す
  2. 次に「動滑車」のルール(力は半分)で処理する

一度に解こうとするからパニックになる。

レイヤー(層)を一枚ずつ剥がして処理する能力。これこそが、難関校が求める「論理的思考力」の正体である。


結論:難しさは「問題」ではなく「君」にある

近年の入試(R2~R7)は、文章が長文化し、思考力を問う傾向が強まっている。

しかし、その土台にあるのは、今回紹介した「H24~H31」時代に確立された基礎原理である。

  • 合力の有無を正しく判定できるか
  • グラフの軸を見ているか
  • 単位というルールを守れるか
  • 複雑な事象を分解できるか

これらができていない状態で、いくら最新の「思考力問題」を解いても意味がない。それは、キャッチボールもできないのに変化球を投げようとするようなものだ。

「自分は物理が苦手だ」と嘆く前に、自分の答案を見直せ。

高度な物理法則を知らないから間違えたのではない。当たり前の作法を無視したから失点したのだ。

習志野受験研究所(Narashino Juken Lab)では、こうした「受験生の脳内に巣食うノイズ」を外科手術的に除去する指導を行っている。

単なる公式暗記ではなく、現象を正しく見る「目」を養いたい者のみ、ここに来ればよい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

コメント

コメントする

目次