【理科】「赤=プラス」の常識を疑え──千葉県公立入試「電池」の進化と罠

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

「乾電池のプラス極には、赤の導線をつなぐ」

この“ありがちな思い込み”が、入試本番で大きな失点につながることがある。

当研究所(習志野受験研究所)が、2012年から2025年までの千葉県入試を分析したところ、電池分野には受験生の先入観を狙い撃ちにする設計がはっきりと存在した。

今回は、電池問題が「用語の暗記」から「現象を根拠に判断する情報処理」へと進化してきた流れと、その象徴である2016年のトラップについて解説する。

■ 2016年の“赤黒トラップ”:色ではなく結果を信じろ

まずは、多くの受験生が冷や汗をかいたであろう2016年(前期)の問題を紹介しよう。

電子オルゴールを使った実験なのだが、手順図の中でさりげなく、しかし衝撃的な事実が提示されている。

  • 図1: プラス極に赤、マイナス極に黒をつなぐ $\rightarrow$ 音が鳴らない
  • 図2: プラス極に黒、マイナス極に赤をつなぐ $\rightarrow$ 音が鳴った

ここで重要なのは、「赤=プラス」という自分の常識ではなく、「このオルゴールは、赤をマイナスにつないだ時に鳴った」という目の前の事実(観察結果)を優先できるかどうかだ。

最後の設問で、備長炭電池にオルゴールをつなぐ場面がある。

ここで色や先入観に頼った生徒は間違えた。正解は、「赤コードをアルミニウムはく(-極)」につなぐという、実験結果に基づいた選択肢だった。

千葉県がこの問題で試したのは、知識量ではない。

「事実(結果) > 思い込み」 を貫ける科学的な態度である。

■ 電池は「定義」→「理論」→「推理」へ

この「ひっかけ」以外にも、千葉県の電池問題には明確な進化の系譜がある。当研究所の分析では、以下の3段階で難化している。

1. 【基礎】電池の成立条件(2014年 前期など)

「砂糖水ではプロペラが回らない」「同じ金属同士では回らない」。

電池を作るための絶対条件(電解質異種金属)を押さえているか。

2. 【深化】イオンモデルの導入(2019年 後期など)

単に「回った」だけでなく、「なぜ回るのか?」に踏み込む。

「亜鉛が電子を放出して溶け出す」といった、原子・イオンレベルのミクロな視点が問われる。

3. 【応用】ダニエル電池・隔膜(2022年など)

ボルタ電池の欠点を克服した「ダニエル電池」の登場。

セロハン(半透膜)が果たす役割など、より深い教科書知識を“説明”に使えるかが問われる。

■ 最新トレンドは「序列の推理」

そして近年(2023年、2025年)のトレンドは、マイクロプレートを使った実験だ。

複数の金属を比較し、「どちらが溶けやすいか(イオン化傾向)」の強弱関係を推理させる問題が増えている。

一見、新しい形式に見える。しかし、根底にある原理は変わらない。

化学電池(発電)においては、「金属がイオンになりやすい(溶ける)側 = マイナス極(電子を出す側)」 となる。

この原理を、実験結果の描写(「表面がざらついた」「泡が出た」など)と結びつけて判断できるかが勝負になる。

■ 結論:現象の「なぜ」を語れるか

千葉県の電池問題は、もはや暗記だけでは太刀打ちできない。

本番で迷わないために、以下の「判断手順」を持って試験に臨んでほしい。

【電池問題・3ステップ判断法】

  1. 結果を確認する(どのつなぎ方で鳴ったか? どの金属が溶けたか?)
  2. 根拠を特定する(鳴ったつなぎ方が正解。溶けた金属がマイナス極。)
  3. 常識を捨てる(コードの色や、金属のイメージだけで決めつけない)

「赤だからプラス」ではなく、「この手順で鳴ったのはどっちか」

「亜鉛だからマイナス」ではなく、「この実験で溶け出しているのはどっちか」

常に目の前の現象を根拠にする癖をつけてほしい。

2016年のトラップに気づける観察眼があれば、最新の比較・推理型も恐るるに足りない。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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