※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【千葉県数学】箱ひげ図は「絵」を見るな。「背番号」を振れ。~2025年入試が告げる『順位特定』の絶対ルール~
1. 2025年の「違和感」に気づいたか?
これまでの千葉県入試において、「データの活用」はいわゆる「癒やし枠(得点源)」だった。
「相対度数を求めよ」「平均値を計算せよ」――公式さえ知っていれば、数秒で処理できる計算ドリルに過ぎなかったからだ。
しかし、その時代は終わった。
2025年の千葉県公立高校入試(数学)では、次のような問いが出た。
2025年 大問2(1)
「生徒32人にテストを行った……第3四分位数は14点、得点が16点の生徒は5人。このとき、得点が20点の生徒は何人か?」
この問題に「箱ひげ図を描け」という指示はない。
問われているのは、分布状況を論理的に解釈して、具体的な人数を確定する力である。
言い換えるなら、こうだ。
「四分位数を点数として眺めるな。順位(背番号)として扱え。」
今回は、多くの受験生が苦手とするこの「順位特定」の視点を、実際の過去問を使って解説する。
2. 「長さ」に騙されるな、「密度」を見ろ
箱ひげ図の最大の罠は、「箱が長い=人数が多い」という錯覚である。
箱ひげ図の本質は「長さ」ではない。人数で区切る境界である。
箱ひげ図は、データを次の4つの区間に分けて考える道具だ。
- 最小値 〜 第1四分位数:下位25%
- 第1四分位数 〜 中央値(第2四分位数):次の25%
- 中央値 〜 第3四分位数:次の25%
- 第3四分位数 〜 最大値:上位25%
重要なのは、「25%ずつ」という点である。
32人なら、各区間は8人ずつになる。
ここで「密度」の意味が決まる。
- 箱が短い区間:同じ人数(例:8人)が狭い点数幅にひしめく=密度が高い(激戦)
- 箱が長い区間:同じ人数(例:8人)が広い点数幅に散る=密度が低い(差がつく)
つまり、箱ひげ図は「長さで人数を読む図」ではない。
人数を固定したうえで、散らばり方(密度)を読む図である。
この感覚を持たないまま「絵」として眺めていると、度数分布表との照合が必要な問題で簡単に崩れる。

3. 徹底解剖:2025年問題を「指差し確認」で解く
では、2025年の問題を例に、研究所流の解法手順を示す。
【問題の条件】
- 生徒数:32人
- 第2四分位数(中央値):12点
- 第3四分位数:14点
- 16点の生徒:5人
- 1問4点×5問(0, 4, 8, 12, 16, 20点のみ)
【核心】
この問題の鍵は、四分位数を「上から何番目/下から何番目」へ翻訳することにある。
Step 1:順位を特定する(背番号を出す)
点数の低い順に並べたとき、
- 第2四分位数(中央値)
32人の真ん中=16番目と17番目の平均 - 第3四分位数(上位25%ライン)
上位16人(17〜32番目)の真ん中=24番目と25番目の平均
ここで「第3四分位数=24番目と25番目の間」と、背番号で見える状態になる。
Step 2:点数を当てはめる(四分位数は“実在しない点”になり得る)
条件より、第3四分位数は14点である。
しかし、このテストで取り得る点は 0, 4, 8, 12, 16, 20 のみで、14点は存在しない。
ここで止まる受験生が多い。
だが、四分位数は「境界の位置」を表すため、実際の得点として存在しない値になることがある(平均で出る)。
「24番目と25番目の平均が14点」になるのは、次の1パターンしかない。
「24番目が12点、25番目が16点」
ここが分水嶺(境界線)だ。
Step 3:人数を確定させる(チェックメイト)
25番目から「16点ゾーン」が始まることが確定した。
16点の生徒は5人なので、
25番目、26番目、27番目、28番目、29番目
この5人が16点である。
残りは 30番目、31番目、32番目 の3人。
彼らは16点より上でなければならない。取り得る点は20点しかない。
よって、20点の生徒は3人である。
この問題は、公式暗記の勝負ではない。
「24番目は誰か」「そこから5人とは何番目までか」と、背番号を具体化できるかどうかが勝負である。
4. 2023年で見る「表と図の翻訳能力」
次に、2023年の問題を例にする。ここでは「箱ひげ図」と「度数分布表」を照合し、正しい記述を選ぶ力が問われた。
多くの受験生が引っかかるのが、選択肢エ「第3四分位数は50回である」というタイプの断定である。
これも「人数」に翻訳すれば瞬殺できる。
- 全体:240人
- 第3四分位数:上位25%の境界
→ 上位25%は60人なので、第3四分位数は上から60番目と61番目の間に来る。
ここで度数分布表の人数を上位側から積む。
- 110〜130回:25人
- 90〜110回:40人
合計:65人
上から60番目(および61番目)は、この「上から65人」の中に入る。
つまり、その生徒は90〜110回の階級にいる。
よって、第3四分位数が「50回」になることはあり得ない。
(50回は、順位でいえばもっと下の層に位置する。)
結局ここでも同じである。
図の端を探すのではなく、人数を積んで“その順位が属する階級”を特定する。
これが千葉県入試の標準動作である。
5. 結論:データの「向こう側」を見よ
これからの千葉県入試「データの活用」において、重要なのは、どのような図を描くかではない。
その図の中にいる32人(あるいは240人)の並び順が、頭の中で見えているかどうかだ。
「第3四分位数」と聞いた瞬間に、
「上位25%の境界ね」で終わるか、
「32人なら24番目と25番目の間だな」と背番号まで浮かぶか。
この差が、そのまま本番の得点差になる。
当ラボでは、複数年分の過去問を「設問の要求処理(計算・読解・順位特定・照合)」という観点で照合している。
その視点で見ると、2025年の出題は偶然ではない。“順位特定”を当たり前の技能として要求し始めたと読むのが自然だ。
学校や普通の塾では、箱ひげ図を『作図』させて満足する。しかし、千葉県入試が求めているのは『作図』ではなく『捜査』だ。この違いに気づいた君なら、次に何をすべきかわかるはずだ

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