【数学の罠】計算ミスではない。君が「中央値」の問題を落とす本当の理由 〜「未知数探し」という千葉県特有のパズル〜

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

目次

1. 「中央値」は、もう計算問題ではない

「データを小さい順に並べて、真ん中の値を答えなさい。」

中央値をこの程度の認識で捉えているなら、千葉県の入試では失点する確率が上がる。千葉県で実際に出た中央値の問題には、単なる「計算」ではなく、次の形式が混ざっている。

「中央値が〇〇になるために、未知のデータ a はどんな値であればよいか?」

これは計算力ではない。データの並び(順位)がどう動くかを読む「構成力」が試される問題である。

多くの受験生は、計算ミスではなく「考え方の迷子」になって落としている。
今回は、この「中央値パズル」を解くための思考回路(アルゴリズム)を解剖する。

2. Level 1:バランスを崩さない場所を探せ(2019年)

まずは入口として、2019年の問題を扱う。

問題(要約)

7人の靴のサイズの中央値は25.0cmである。
データ:27.0, 24.0, (a), 26.0, 26.5, 24.5, 25.0
このとき(a)として適切なものを選べ。
選択肢:ア 26.5/イ 25.5/ウ 24.0/エ 26.0

【思考プロセス:中央値の「席」を守る】

まず、わかっている6つを小さい順に並べる。

24.0, 24.5, 25.0, 26.0, 26.5, 27.0

7人の中央値とは、小さい方から4番目の値である。いまの並びでは、25.0は3番目にいる。

  • (1) もし(a)が25.0より大きい数値なら
    (a)は右側(4番目以降)に入る。すると25.0は3番目のままで、4番目(中央値)は25.0ではなくなる(もともと4番目にいた26.0などが繰り上がるため)。
  • (2) 逆に(a)が25.0以下なら
    (a)は左側(1〜3番目)に割り込む。すると順位が玉突きで1つずつ後ろへズレ、もともと3番目だった25.0が4番目(中央値)にスライドしてくる。

したがって条件は「aは25.0以下」である。
選択肢で条件を満たすのはウ 24.0のみ。

ここで行っているのは計算ではない。「(a)を入れた瞬間、順位がどう動くか」のシミュレーションだけである。

3. Level 2:箱ひげ図は“条件表”だ。Q1とQ3で a を詰める(2022年)

2022年の長縄跳びは、中央値だけで終わらない。

箱ひげ図を「絵」として眺めた瞬間に負ける。やるべきことは一つ、箱ひげ図を“条件の一覧表”として読むことである。

問題の材料(整列)

1〜8回目:3, 11, 7, 12, 14, 7, 9, 16

↓ まず小さい順に並べる(ここは毎回、指差し確認でやる)

3, 7, 7, 9, 11, 12, 14, 16

ここに9回目の a を1つ差し込んで、合計9個のデータにする。

Step 0:箱ひげ図が“固定したい部品”を読み取る

この箱ひげ図は、少なくとも次を固定している。

  • 最小値(左端のヒゲ)
  • 第1四分位数 Q1(箱の左端)
  • 中央値(箱の中の線)
  • 第3四分位数 Q3(箱の右端)
  • 最大値(右端のヒゲ)

このうち今回は特に、Q1とQ3が「詰め将棋の駒」になる。

Step 1:中央値で「a の上限」を切る

9個のデータの中央値は 小さい方から5番目 である。
今ある8個は 3, 7, 7, 9, 11, 12, 14, 16 なので、a を入れると「5番目」が動く。
ここを指差し確認する。

  • もし a ≥ 10 なら、5番目は 10 か 11 になりやすい(9の右側が厚くなるからだ)。
  • しかし、箱ひげ図の中央値の線は 9の位置 に来ている。

したがって、箱ひげ図と一致させるには
a ≤ 9 でなければならない。

Step 2:最小値で「a の下限」を切る

箱ひげ図の最小値(左端のヒゲ)が 3 である以上、

  • もし a ≤ 2 なら最小値が2以下に動いてしまい、図が壊れる。
  • よって a ≥ 3

ここまでで 3 ≤ a ≤ 9 に絞れた。

Step 3:Q1=7 で「3〜6」を全滅させる(詰み筋)

9個データの Q1 は、下位4個の中央値(2番目と3番目の平均)で決まる。
ここからが“指差し確認”の本番である。

Case A:a が 3〜6(7より小さい側に入る)

並びはこうなる。
3, a, 7, 7, 9, 11, 12, 14, 16
下位4個は 3, a, 7, 7

このとき Q1 は(真ん中2つの平均)
$Q1 = \frac{a + 7}{2}$

a が 3〜6なら、(a+7)/2 は 必ず7より小さくなる
つまり Q1=7(箱ひげ図の条件)を満たせない。
よって a=3〜6 は全滅

Case B:a が 7〜9(7以上の側に入る)

並びはこうなる。
3, 7, 7, a, 9, 11, 12, 14, 16
下位4個は 3, 7, 7, a

このときのQ1は
$Q1 = \frac{7 + 7}{2} = 7$

箱ひげ図と一致。よって候補は a=7, 8, 9 まで残る。

Step 4:Q3 の一致チェックで“決着感”を出す

ここで同じ手を上側でもやる。
9個データの Q3 は、上位4個の中央値(2番目と3番目の平均)で決まる。

a=7〜9のとき、並びは
3, 7, 7, a, 9, 11, 12, 14, 16
上位4個は 11, 12, 14, 16(ここは a が7〜9なら絶対に変わらない)。

したがって
$Q3 = \frac{12 + 14}{2} = 13$

箱ひげ図の箱の右端(Q3)がこの位置に一致する。
つまり、下(Q1)から詰めても、上(Q3)から詰めても、残るのは同じという形で「詰め将棋感」が完成する。

結論

以上より、箱ひげ図と一致する a は

a = 7, 8, 9

である。

補足:なぜ「中央値」だけでは決まらないのか?(役割分担論)

「じゃあ“中央値”だけで絞れなかったのか?」という疑問はもっともだ。

結論から言えば、中央値は候補を一気に“狭める”役であり、一発で“確定”させる役ではない。
今回の流れを「役割分担」で言い換えるとこうなる。

箱ひげ図攻略のチームプレー

  • 中央値:上限カット担当
    $a$ が大きい側に入ると5番目が動いてしまうため、候補を $a \le 9$ までバッサリ切り落とす係。
  • Q1:決定打担当
    下位4個の構造上、$a$ が7未満に入ると必ずズレる。これにより3〜6を全滅させ、7〜9 に追い込む係。
  • Q3:詰みの確認(検算)担当
    上位4個は $a$ の影響を受けないため、最後に「残った候補が箱の右端とも矛盾しない」ことを確認して安心する係。

つまり、千葉県の箱ひげ図はこういうゲームなのである。

「中央値で縮め、
Q1で仕留め、
Q3で確定の形を固める」

4. 攻略の鉄則:Sort → Slot → Slide

今後この「逆算パズル」に出会ったら、次の手順で処理せよ。

中央値パズルの3ステップ

  • Sort(整列)
    わかっている数字を必ず小さい順に並べる。
  • Slot(挿入)
    未知数aが入る「隙間」を意識する(左/中央付近/右)。
  • Slide(順位のズレ)
    aを入れたとき、ターゲット(中央値・Q1など)の背番号がどうズレるか、指で追う。

中央値は「真ん中」ではない。“n個中の何番目か”で読むものだ。ここを背番号で見た瞬間、計算ミスは起きようがなくなる。

5. 結論:これは「未知数探し」の試験である

千葉県の中央値問題で問われているのは、平均のような作業ではない。
「データが1つ動いたとき、順位がどう動くか」を予測する力である。

前回の「箱ひげ図=人数カウント」と合わせて、この「中央値の逆算」を押さえれば、千葉県のデータ問題は安定して得点源になる。

恐れる必要はない。
データは嘘をつかないが、君の思考を試そうとはしてくる。その挑戦を、構造でねじ伏せろ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

コメント

コメントする

目次