高校入試面接における「自分らしさ」という猛毒。あるいは「1点の重み」について。

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

千葉県公立入試において、学校設定検査として「面接」を採用している高校は全体の6割弱にのぼる。もちろん全ての高校で実施されるわけではない。実施校であっても、その配点は500点満点の学力検査と比較すれば小さく設定されていることがほとんどだ。また、よほどの不手際がない限り、多くの受験生には減点のない「基準点」が与えられる傾向にあり、大きな点数差はつきにくいとされる。

だからこそ、学校や塾の指導はこうなる。 「普通にやっていれば大丈夫」「元気よく挨拶すればいい」「ありのままの自分を見せればいい」。

だが、この「油断」こそが最大の罠である。 入試の合否ボーダーライン上には、1点刻みで数十人の受験生がひしめき合っている。ここでは、面接での些細な減点が命取りになる。

ここで問いたい。 「君は、数学の計算ミスで失う1点は悔しがるのに、面接でドブに捨てる1点にはなぜ無頓着なのか?」

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減点法のリスク管理

よくある誤った指導の代表例がこれだ。 「短所を聞かれたら、正直に答えた上で、それを改善しようとしている姿勢を示せばいい」

生徒はこう答える。「私の短所は時間にルーズな所です。しかし、早めの行動を心がけています」。 この回答をしたからといって、即座に不合格になるわけではない。

しかし、高校教師(採点官)の心理を因数分解してみよう。彼らが最も嫌うのは「集団行動を乱す匂い」である。 「時間にルーズ」と宣言する生徒に対し、加点する要素はゼロだ。むしろ「指導に手間がかかりそうだ」という心証を与え、評価を下げるリスク(不確定要素)を自ら作り出している。

これはテニスで言えば「アンフォーストエラー(凡ミス)」だ。 相手に攻められたわけでもないのに、自分からネットにボールを引っ掛けて失点している。 配点が低いからこそ、確実に取れるはずの「基準点」を、つまらない正直さで自ら手放す行為は、戦略としてあまりに損である。

「正解」の在処(ありか)と防衛術

では、減点を防ぎ、確実に得点するための「正解」はどこにあるのか。 正解は「自分らしさ」の中にあるのではない。志望校が公表している人物像、つまり「評価軸」の側にある。面接とは、自己表現の場ではなく、不適合リスクを取り除く最終確認の場である。

したがって戦略は単純である。以下の3点を徹底せよ。

1. 志望校の“地雷”を先に特定せよ

校訓・スクールポリシー・求める生徒像から、その学校の教師が嫌う要素(遅刻常習、協調性の欠如、ルール軽視など)を逆算する。それらに触れる発言は、いかなる理由があろうと「地雷」である。

2. 短所は「学校生活の破壊」に繋がる語を避ける

「時間にルーズ」「飽きっぽい」「人の話を聞かない」。これらは、改善努力を添えてもリスクが勝つ。 短所を答える際は、人格的な欠陥ではなく、「学習面・作業面の癖(真面目さの裏返し)」に寄せるのが安全である。

  • 【安全な回答例 1】 「人前で話すのが苦手で、緊張してしまいます」 →「だからこそ、事前に何度も練習して準備する癖をつけています」 ※「緊張」は「真剣さ」の裏返しであり、準備の徹底をアピールすれば「勤勉な生徒」という印象に変わる。
  • 【安全な回答例 2】 「慎重すぎて時間を使いがちです」 →「優先順位を決めて制限時間を置くようにしています」

重要なのは“反省”ではなく、「再現性のある対策」を言語化できているかどうかだ。

3. 「嘘」の定義を履き違えるな

ここを誤解している受験生が多いが、「過去の事実(Fact)」と「未来の意志(Will)」は区別しなければならない。

やっていない生徒会活動をやったと言うのは「虚偽」であり、絶対にしてはならない。 しかし、今はまだできていなくても、「高校に入ったらこう頑張りたい」という前向きな意志を語ることは嘘ではない。それは「宣言(コミットメント)」である。

「高校に入ってから頑張る気が無い」と見なされる生徒を、好んで高い評価をつける採点官(教師)はいない。 学校が「向上心」を求めているなら、それに合わせたエピソードや意志を語るべきだ。「今の自分はそうじゃないから言えません」というのは、単なる甘えである。

1点を笑う者は1点に泣く

つまり、面接対策の本質とは、「加点を狙う技術」ではなく、「減点の地雷を踏まない技術」である。

「たかが面接」と高を括ってはならない。 学力試験でライバルと並んだ時、最後の最後に合否を分けるのが、この「凡ミスによる減点」の有無だ。

今の自分が志望校の求める人物像(正解)と違うのなら、入試当日までに、その人物像にふさわしい自分に変わればいい。 面接対策とは、自分を偽ることではない。合格に値する人間へ自らを変革させる「努力」そのものである。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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