※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。
【東邦大東邦中】「速いのに落ちる」のはなぜか。医学部付属が嫌う「見落とし」という致命傷。
前回、東邦大東邦の算数を「45分間の処理能力テスト」として定義した。 食塩水の濃度計算や立体図形の処理を、速く・正確に進める能力は、確かに合格への最低条件である。
だが、それだけで合格できるかといえば、答えは否である。 東邦の算数には、もう一つ強烈なメッセージが埋め込まれている。
それは、「君は、たった一つの可能性も見落とさないか?」という適性検査だ。
1. 「速さ」の裏にある罠
東邦の算数で、受験生が最も悔しがる失点パターンがある。 それは計算ミスではない。数え上げのミス(見落とし)である。
直近の過去問(2016〜2025)を俯瞰すると、前回の「食塩水」と並んで頻出している領域が見えてくる。 それが「整数の性質(周期性・約数・倍数)」と「場合の数(条件整理)」である。
例えば、2018年度の大問2は象徴的だ。
- (1) 3を2018回かけ合わせた数の一の位(周期性)
- (2) 13で割った商を四捨五入する逆算(条件処理)
- (3) 2, 3, 4, 5, 6cmの棒で三角形を作る組み合わせ(見落とし・重複の管理)
一見すると標準的な一行問題に見える。だが、ここに東邦の“厳しさ”が凝縮されている。
三角形の成立条件(短い2辺の和 > 長い1辺)を例外なく適用し、重複なく、漏れなく数え上げられるか。 3のべき乗の一の位の周期(3, 9, 7, 1…)を、焦りの中でも冷静に回せるか。
これらは勢いやセンスで解く問題ではない。求められているのは、条件を整理し、しらみつぶしに検証する能力である。
2. 東邦が測っているのは「漏れなく・ダブりなく」の診断力
なぜ東邦は執拗に「整数の条件」や「数え上げ」を出すのか。ここを医療の比喩で捉えると理解が早い。
医療現場での「診断」とは、可能性の列挙と消去である。症状から考えられる原因を洗い出し、検査で一つずつ否定していく。 このとき「可能性を一つ見落とす」ことは致命的(医療過誤)になり得る。
東邦の「場合の数」は、まさにこのシミュレーションである。
- 「この条件を満たす組は本当に全部か?」
- 「境界のケース(最大・最小、同値、例外)は漏れていないか?」
そう自問し、完璧なリストを作る。 スピード処理(外科的スキル)と対になるのが、この見落としを許さない診断的スキルである。
3. 合否を分けるのは「あと1つ」を探し続ける執念
合格ラインに乗る受験生と、惜しくも落ちる受験生の差は、この分野で露骨に出る。
落ちる受験生は、「たぶんこれで全部だろう」と切り上げて次へ進む。 受かる受験生は、「見落としがあるかもしれない」と疑い、最後の一つが見つかるまで検証を止めない。
東邦の算数は45分しかない。だからこそ、焦りの中で“雑な確信”に逃げない胆力が問われる。 スピードだけで突っ切った瞬間、東邦は確実に取りこぼしを発生させにくる。
4. 習志野受験研究所の「診断力」強化プロトコル
当研究所が行うのは、単なる解法暗記ではない。東邦大東邦志望者には、次の「診断プロトコル」を徹底させる。
- 整理の型を固定する: 場合の数は、樹形図・表・辞書式配列のどれで書くかを即決する(迷う時間を消す)。
- 境界値チェック(エッジケース): 整数条件では、1・0・最大最小付近で例外が出ないかを必ず点検する。
- 10秒の確認を挟む: 最後にまとめて見直すのではなく、各大問の終端で「漏れの芽」を短時間で摘む(致命傷の早期発見)。
東邦大東邦は、速いだけの受験生を求めているのではない。 どれだけ急いでいても、論理の安全確認を怠らない“プロの卵”を選びにきているのだ。

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