【渋幕中の正体】あれは「算数」ではない。「高校数学」への接続性を測る適性検査である。

※本記事は、客観的分析のため『だ・である調』で統一しています。

序論:中学受験の「常識」を疑え

千葉県の最難関中学、渋谷教育学園幕張中学校(渋幕)。 この学校の算数について、多くの受験生や保護者、あるいは指導者までもが「難問だ」「奇問だ」「捨て問の見極めが大事だ」と口を揃える。

しかし、その「難しさ」を単なる高難易度として処理してしまうと、本質を見誤る。 当研究所が過去問の構造を解析した結果、一つの明確な設計思想が浮かび上がった。それは、「高校数学の概念操作(抽象化・一般化)への耐性」を測っているという点である。

渋幕中が求めているのは、12歳時点での完成された算数力というよりも、6年後に東大や医学部レベルの数学に対応できる「思考のOS(基本仕様)」を備えているかどうかの確認であると推察できる。

成分分析:小学生に問う「数学的思考」の正体

実際に2020年から2025年までの過去問を分析すると、高校数学の特定単元と「発想の型」が酷似していることがわかる。

1. 規則性:「数列的発想(漸化・周期)」

渋幕で頻出の「規則性」の問題。例えば2023年の大問2では、前の2つの数を足して1の位を取るルールが出題された(フィボナッチ数列の変形)。あるいは2022年の大問1における六角形の石の配置(群数列)。

これらは、高校数学で学ぶ「漸化式」や「数式の一般化」の概念に近い。公式を当てはめて処理するのではなく、「実験→法則の発見→数式化」というプロセスそのものを、算数の範囲内で再現させている。

2. 数の性質:「条件の圧縮(整数論的アプローチ)」

2025年の大問2(4桁の数の並べ替え)や、2021年の大問1(独自記号の演算定義)。 これらは、高校数学における「整数の性質(合同式やユークリッドの互除法)」に通じる論理構造を持つ。膨大な計算をさせるのではなく、「条件を絞り込み、解の候補を特定する」という論理的思考力が合否を分けている。

3. 立体図形:「座標・ベクトル的な空間把握」

多くの受験生が苦戦する立体の切断・展開図。2025年の大問5(四角すいの切断)などが好例だ。 これらは、幾何的な直感(センス)だけで解いているように見えるが、その背後には「空間座標」や「ベクトル(位置関係の数値化)」に近い処理能力が求められている。

結論:求められているのは「研究者適性」

渋幕の入試問題から読み取れるメッセージは明確だ。 彼らが求めているのは、パターン学習を積んだ「作業員」ではない。未知のルールを与えられたその場で、仮説と検証を繰り返し、自力で最適解を導き出す「リトル・サイエンティスト(研究者の卵)」である。

「算数は得意なはずなのに、渋幕だけは解けない」。そう感じるならば、それは「算数」の枠組みだけで戦おうとしているからかもしれない。求められているのは、より高度な数学的探究心である。

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「過去問を何年分解けばいいですか?」への回答。渋幕中合格に必要なのは『演習量』ではなく『実験量』だ。

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この記事を書いた人

習志野受験研究所 所長/新・個別指導アシスト習志野校 塾長

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